第414話 寝言

最近、夫の様子がおかしい




以前は夜11時頃に寝ていたのに、ここ最近は早く帰宅し、夜8には寝る




別に、朝早く起きるわけではないようで、起きるのは起こさなければ7時くらいだろう




よく眠れていないのか、起こしたときも何とか起きてくるような感じだった




「大丈夫?」




「ああ、大丈夫だ。それよりも、俺は君の方が心配だ」




「私は大丈夫よ。何も無いわ」




私がそう言うと、夫は苦笑いのような表情を浮かべて顔を洗いに行った




それから数日が過ぎたが、夫は少しやせこけてきたように見える。それでも、大丈夫というので、一応病院へ行ったらと言ったが、原因は分かっているからと言う。原因って何だろう?




その日、私は同窓会で友人たちと久しぶりに飲み、ご機嫌で家に帰った。夫はすでに寝ているようで、時計を見ると1時過ぎだった。夫を起こさないように軽くシャワーだけして布団に入る




酒のせいか、うまく寝付けないまま10分ほどたったころ、夫が起きる気配がした




(トイレかしら?)




特に何かあるわけではないので、私は目をつぶったまま寝たふりをする




しかし、夫はトイレにも行かず、布団に入る様子は無い。それから数分経ったが、変わらなかった




さすがに変に思ったので、声を掛けようと思ったその時




「変だな、今日は何も言わない……?」




私は「?」と、声を掛けるタイミングを逃した。すると、夫のつぶやきは続いた




「まさか……今日なのか? 今日、俺は……」




さすがに様子がおかしいので、私は起き上がる




「うわぁ! お、起きたのか……?」




「うん、まだ寝られなくて……それより、どうしたのよ?」




「え? ああ、気づいてなかったのか? お前、最近2時になると寝言を言うんだ」




「寝言……? それが何か……あっ、ごめん、うるさかった?」




「そうじゃない。その寝言は……今日俺に起きる出来事そのものなんだ。最初は偶然だと思ったが、最近じゃそれを聞かないと不安で不安で……それも、悪い出来事が続くし……」




そう言って夫はうつむく。それで最近早く寝ているのに寝不足気味だったんだ……




「でも、今日はもうその時間が過ぎちゃったし、大丈夫じゃない?」




「いや、だめだ……寝言がきけなかった日は、不運も回避できないから……」




そう言った瞬間、突然大きな地震が私達を襲った。そして、タンスが倒れて夫が下敷きになった




幸い、私が居た事もあり、すぐに夫を救出して、夫は打ち身だけで済んだが、もし私が帰ってきていなかったら、夫は身動きが取れず窒息していたかもしれない……




それ以来私は必ず早めに寝るようになった

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