第403話 バス停

田舎のバス停は、1時間に1本通ればいい方だ




バスで旅館に来たのはいいが、帰りのバス時間を見間違えたらしく、次のバスが来るまで1時間以上ある




「みすったな……」




幸い、急いで帰る必要も無いが、暇である




スマフォでサイトを適当に見ていた時、ふとこちらに歩いてくる影が見えた




まだ午前中なのに、雰囲気が暗いというか、表情が見えないというか……




それは年のいったおばあさんだった。じっとバスの時刻表を見つめて動かない




「……あの、どこへ行かれるんですか?」




暇なのと、おばあさんが時刻表が見えなくて時間が掛かっているのだと思い、話しかける




「……おじいさんの所へ」




「ああ、お見舞いですか? どこに入院されているんです?」




だから表情が暗いのか、とそう勝手に思っていた




「……よ」




「え?」




「おじいさんは……あの世だよ」




その瞬間、さっきまでの暗い表情が嘘だったかのように、晴れ晴れとした笑顔になった




私は不気味な感じがして、次のバスに乗らないことにし、バス停を離れた




その後、そのおばあさんのせいかどうかは分からないが、事故を起こしたそうだ




幸い、死亡者は居なかったようだが、そのバスに乗らなくてよかったと思った

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