第381話 溺れている子
夏休みに入り、川で遊ぶ人が増えた
川は海と違って監視員などおらず、誰かが見ていないと危ないと思う
俺は川釣りが好きの友人に付き添って川へきているが、のんびりと川の流れを眺めたり、たまに流れてくる何かを見てくつろいでいた
すると、上流から小さな男の子が溺れて流れてきているのが見えた。顔と両手だけを川から突き出し、今にも沈みそうに見える
「待ってろ! いま助ける!」
俺は靴を脱ぎ、担いでいた荷物をはずし、いざ川へ……
「やめろ!」
友人が強い口調で止めた
「何故だ?! 子供が溺れているんだぞ!」
「馬鹿野郎! 溺れるわけ無いだろ、こんな浅い川」
言われて見てみると、川底の砂が見える程の浅い川だ。じゃあ、あそこだけ深いのか? と思って子供が溺れていたあたりを見ると……誰も居なかった
俺は、何かと見間違えたか? と首を捻る。それをみて友人がポツリとつぶやく
「たまにいるんだよ。昔、ここで親に沈めて殺された子供の霊が見えるって奴が。幸い、俺は見たことは無いが、話だけは聞いたことがある」
そう言われてみると、ちょうどさっき子供が溺れていたあたりに花が添えられている
「なんまんだぶ、なんまんだぶ……」
俺は手を合わせて念仏を唱える
「おじさんも溺れればいいのに」
俺はバッと振り返ったが、誰も居なかった。俺は首筋がぞくぞくしたので、川から離れる事にした
その後、その子を見る事は無かったが、川へ近寄ることも無くなった
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