第379話 試着室

下着売り場で働いていた時の事




私のレジから、丁度見える試着室に、いつの間にかお客様が入っていたようだ




仕切りカーテンの下から足が見える




今日は平日で、お客様の数は少ない。少し愛想でもして売り上げに貢献するか




「お客様、何かご要望はありますでしょうか?」




下着の付け方、下着の大きさ、アドバイスはいろいろできる。コーディネートや勝負下着なんかは個人の主観が入るが




しかし、返事が無い。タイミングが悪かったのだろうか?




レジにお客様が並んでいたので、レジの方へ向かうことにした




「何かありましたら、および下さい」




レジも終わり、もう一度さっきの試着室を見ると、誰も入っていなかった。しかし、レジには来ていなかったような?




「先輩、試着室に入っていたお客さん、誰だったんですか?」




「あなた、何を言っているの? 午前中に試着するような買い物をした方は居なかったわよ」




「え? だって、試着室に足が……」




「あなた……それは見なかったことにしなさい。それと、試着室に誰か入ってるかどうかは、必ず靴があるか確認する事。いいわね?」




先輩はそれだけ言うと、そそくさと奥へ入っていった




「靴があるかどうか……そういえば、さっきは靴が無かったような……」




私はゾッとして試着室の方を見ないようにした

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