第367話 地下アイドル

私は、アイドルをやっている




と言っても、まだ地下アイドルだけど。そのうち表舞台に立ってやるわ!




そんな私にも、少なからずファンがいる。私にはマネージャーなんて上等な者は居ないけれど、マネージャーの真似事をしてくれる幼馴染の男性が居る




恋愛感情は……少しだけあるけど、アイドルとして生きて行く以上、表立って彼氏がいますと宣言するわけには行かない




ファンの中には、異常に……いえ、大変熱烈なファンの方も居て、ファンレターや誕生日プレゼントなどをマメに送ってくれる




「気をつけろよ、こういう奴ほど何かあった時怖いからな」




「分かってるよ。だからあんたともこうやって仕事上でしか会っていないんじゃない」




本来ならば女性のマネージャーを雇えばいいのかもしれないけれど、私にはそこまでの収入は悲しいことに無いのだ




幼馴染にしたって、アルバイト感覚でそんなに大きな金額は払っていない。タダでもいいと言っていたけど、そういう訳にはいかない。なんだかんだでお世話になっている




1回くらい、お礼にデートしてあげちゃおうかな








デートした日から、視線を感じるようになった。一応変装はしていたけど、ファンが見れば一発で分かる程度の変装だ。逆に、ファンにすら分からないほどの変装だと、不審人物だ




辺りを見渡しても、ティッシュを配る着ぐるみや、お客に声を掛ける客寄せの店員、路上でパフォーマンスをしている人など様々で、誰がこちらに視線を向けているのか分からない




すると、ティッシュを配る着ぐるみの人が、私にティッシュをくれた




「ありがとう」




「昨日一緒だった男は誰や?」




私はギョッとして逃げ出そうとしたが、手を掴まれる




「誰か! 助けて!」




叫んだけれど、誰も私に気が付かない、なんで?!




「お前、ファンを……俺を裏切るのか?」




そう言って着ぐるみの中からナイフを持った手が見えた




「きゃーっ!」




……そこで目が覚めた。すると、暗い部屋の中に誰か知らない男が居る事に気が付いた




「誰!」




男は慌てて逃げ出した




「大丈夫か!」




幼馴染が私の声に気が付いて、駆けつけてくれた。そして、不審者を警察に突き出した




「ありがとう」




「いいってことよ。これからも気をつけろよ?」




あれ? 何で幼馴染も私の家に居たのかな……?


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