第244話 顔が

ひゅーひゅひゅーひゅーひゅー




酒を飲んだ帰り道。時刻はすでに深夜の0時を過ぎているだろう。下手糞な口笛を吹きながらご機嫌で帰り道を歩く




すると、電信柱の影に何かしゃがんでいるのがみえた




素面なら恐らく逆方向に歩きなおしただろうが、酔っ払いは無敵だ




「おい、そこのやつ、何してるんだ?」




すると、しゃがんでいたのはお寺の坊主のような服を着た小学生くらいの背丈の男の子のようだ




後ろを向いている為、ちっちゃいおっさんの可能性もあるがな




「おい、無視するな!」




普段は気が小さいが、酒を飲むと気が大きくなるタイプの俺は、肩をガシッと掴んで振り向かせる




振り向いた男の子の顔が、無い




「顔が無いぞ?」




酒が入ってなければのっぺらぼうだと慌てて逃げただろうが、酒が入った俺は理性で動いてないからな




こういう対応は初めてなのか、のっぺらぼうもたじろいているように感じた




「顔を描いてやる」




俺は持っていたカバンから油性ペンで顔を描く。へのへのもへじに近い落書きだ。俺に絵の才能なんて無いからな




すると、そののっぺらぼうは慌ててスッと消えた




それを女房に話ししたのだが




「酔っぱらって幻覚でも見たんじゃないの?」




と信じてくれなかった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る