第238話 樹海で

俺は今、樹海に手ぶらで来ている




おっと、手ぶらと言っても一応懐中電灯、コンパス、ロープ、筆記用具を持ってきているぞ




そして、忘れてはならない遺書も持ってきている




そう、俺は自殺の為に樹海に来た




薄暗い中、あてもなく歩いて行く




本格的に真っ暗になる前にロープだけでも準備しようと立ち止まった時、ふと音が耳に入った




「・・・な・・い・・、し・・・い・・で」




「何の音だ?」




死ぬつもりで来たので今更怖い物なんてない、音がする方に歩いて行く




すると、コオロギに近づいたときの様に急に音が途切れる




木の影をライトで照らすと、ぶら下がっている白っぽいものが目に入った




「うわっ!」




俺は驚いてライトを落とした。それ以外何も起きないので、ライトを拾いゆっくりと立ち上がって再び白いものを照らす




「・・・自殺者か」




ほとんど白骨化して、なんとかロープに衣服だった何かがひっかかって落ちていないだけの物がぶらさがっている




雨にかからないようにか、木のウロの中にボロボロの遺書があった




「俺もこうなるつもりだったのか・・」




俺は急に冷静になって、GPSつきの衛星電話で警察を呼んだ。万が一死ねなかった時に帰れるように保険をかけていた俺はやっぱり自殺はできないんだろうな




俺は警察から状況説明と、説教を受け、自宅に帰った




「これももう捨てるか」




そう思ってポケットに入っていた遺書を取り出すと、遺書の空白に「しなないで」と書いてあった




自分を見つけてほしかったのか、こうして自殺を止めるためだったのか、俺には分からない




ただ、明日から頑張ろうと思う

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