第224話 傷跡

この噂はご存じでしょうか




「墓場で怪我をすると治りにくい」




僕の祖父の墓は山の中にあります




車では入る事すらできない場所です




山の途中までは軽トラックに乗って行きます




がたごとがたごとと舗装されていない山道を通るため、結構危ない気がします




車がすれ違える場所はたまに広くなった道くらいで、ほとんどすれ違うことは無いけれど、お盆などではごくたまに墓参りが被った同じ場所に墓を持つ人たちとすれ違うくらいでしょうか




その日は、すれ違うことも無く墓へ入る道へ着きました。車を降りて歩きで墓に向かいます




僕は、でっぱった木の根につまづいて膝をすりむいてしまいました




「いたっ」




母がすぐにハンカチで血を拭き、絆創膏を貼ってくれました




ずきずきする足の痛みをこらえながら、墓参りをすませ、軽トラに戻ってくると、絆創膏が血で真っ赤になっていました




「思ったより傷が深かったのかしら?」




母は絆創膏を取り換えてくれました。絆創膏を取った時にはすりむいた程度で、そんなに血が出る様な傷ではありませんでした




次の日には、かさぶたになっていましたが、かさぶたはまるで人の顔のように見えます




あれから10年が経ちましたが、僕の膝にはまだ顔の様な傷が残っています


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