第220話 空き家

ワシはホームレスなんじゃが、冬も近くなってきたのでたまには雨風の当たらないところで寝たいと思っておった




すると、集落から離れた場所にポツンと家があるのに気が付いたのじゃ




人目が無くなった夕方過ぎを狙って家に近づいた




玄関を見てみると、入口の扉が壊れておって紙が貼られているだけじゃった




売家と書いてないので恐らく空き家じゃろう、しばらくここで過ごさせてもらおうかのぅ




家に入ると、思ったよりも中がちらかっておる。ワシはとりあえず眠かったので、久々のベットで眠ろうかのぅ




「なぁー」




ワシが寝ようと思ったら、寝室の入口から猫の鳴き声がした




ふむ、ワシだけじゃなくて猫も住処にして居ったのか




ワシは扉を開けたが、なにも居らんかった




しかし、夜中じゅう「なぁー」「うぇー」「ぶぅー」とうるさかった。さらに、たまにゴンゴンと何かをぶつける音までするんじゃが、音のするあたりを見ても何も見つからんのじゃ




明日、若いもんに頼んで原因を探ってもらおうかのぅ










俺は爺さんの頼みで家を見に来た。ホームレスになってまだ数年の俺は、不法侵入じゃないか? と言ったが、数日警察のお世話になるのも数日空き家に入るのも大して変わらんじゃろと言われ、さらに酒をワンカップくれるというのでしぶしぶ引き受けた




酒なんてすごく久しぶりだからな




じいさんは今日は知り合いに会いに行くと言って一緒には着ていない




ここか




俺は玄関の紙をくぐって家に入る。問題の寝室で待機するが、何も起きないな




しばらくして、いつの間にか寝てしまっていたのだが、物音で起きた




「あー」




じいさんが言っていた猫か? 結構近くで鳴き声が聞こえたな




俺が寝室の扉を開けると、そこに首が180度まわった赤ん坊が居た




「なぁー」




俺はこいつが原因だと思い、すぐに赤ん坊をジャンプで飛び越えると、玄関の紙を破ってダッシュで戻った




「じいさん!」




「おぉ、戻った・・ぎゃー」




じいさんは俺の肩を見ると、年を感じさせないスピードで逃げた




「なんだ?」




俺が肩を見ると、赤ん坊が乗っていた 「なぁー」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る