第178話 白い人形

沢登りをしていた時の事だ





通いなれた山道を歩き、川の近くに荷物を下すと、水にぬれてもいいような格好に着替える





沢登りは危険ではあるが、何度も通っているのでそこまで心配はしていない





一応、一人暮らしではあるが、万が一の時のための準備もしてある





準備を終えて小さな滝になっている部分を登っていく





すると、滝の上から白っぽい人形のようなものが落ちてくる





白目しかない目と視線があった気がした





俺は一瞬気を取られ、コケで足を滑らせてしまった





滝つぼは浅く、川底に背中を打ち付けてしまい、「ごほっ」と息を吐いてしまった





俺はそこで死を予感し、意識を失った





気が付くと病室だった





「運が良かったですね。たまたま人が通りかからなかったら危なかったですよ」





俺が言うのもなんだけど、あんな場所に人が通るとは思えない





「どんな方ですか? お礼を言いたいのですが」





情報を得ようと看護婦さんに問いかける





「私もそう思って救命士に聞いたんだけどね、お礼も何もいらないと言って救急車に乗らなかったらしいのよ」





俺も詳しくは無いのだが、こういう時は警察も事件性うんぬんで動くんじゃないだろうか?





そう思っていると、警察が来たようだ





「ご加減はよろしいですか? ちょっと話を聞きたいのだけれど」





「ええ、大丈夫ですよ」





幸いにも打撲のみで話をする分には支障がない





「この人に見覚えはありませんか?」





写真を見ると、あの人形がフラッシュバックした





「……川を流れていった気がします」





「そうですか……」





その話を信じたのか、警察は写真をしまう





「3日前に行方不明になっていた男性で、あなたに抱き着いた状態で発見されたんですよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る