第176話 首吊り

小さかった時の話です





おそらく5歳くらいの頃だったと思いますが、そもそも夢だったのか現実だったのか、今となってはあいまいになってしまいました





記憶も断片になっています





私は、神社の境内にいました





何故いたのかは忘れましたが、そこに〆縄がしてある石があったのを覚えています





私が石に近づくと、いつの間に居たのか石に座る女の子がいました





「ねぇ、遊ばない?」





そう声を掛けてきた女の子は、首が伸びて舌を出し、黒目は上を向いていてほぼ白目でした





私は不思議に思わずに





「その首どうしたの?」





と尋ねていました





「首を吊っただけよ」





女の子はこともなげにそう言いました





「ふーん、でも私、そろそろ帰らないと」





時間の記憶はありませんが、もう夕方に近かったような気がします





「残念ね、またここに来るのかしら?」





それになんて答えたのかは忘れましたが、「来る」とも「来ない」とも言わなかったと思います





女の子は石からひょいと飛び降りると、木々の間を抜けて見えなくなりました





私がなぜこのことを思い出したのかと言うと、木が……縄が……意識が……

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