第58話 マルチエンディング

私は、小学6年生の、カスミです。友達のユキちゃんと、今日の夜、学校の七不思議を確認しに行きます




ユキちゃんと、夜の8時に公園で待ち合わせしました




「お待たせ!懐中電灯を持ってきたわ」




「私もちゃんと懐中電灯を持ってきたよ」




ユキちゃんの懐中電灯は、LEDタイプの棒状のやつで、私のは昔ながらのでかい電球タイプです




私たちは、学校の旧校舎に向かいました




体育館の裏に回ると、一つだけ窓が割れているのを知っています。そこから入るのです








体育館から、4階の音楽室へ向かうことにしました




懐中電灯をつけて、ゆっくりと音を立てないように歩いていきます




近くの階段を上っていくと、木造校舎のため、ギシギシと音がします




3階まで上がった時、ギシ・・ギシギシ・・ギシ・・ギシギシと、私達2人の足音のほかに、一人分増えていることに気づきました




「ねえ、ユキちゃん・・」




「シッ、一気に登ろう!」




私たちは、急いで4階に上りました




ギシギシギシギシ








「ユキちゃん!」




私は泣きそうになってユキちゃんの手を掴みました




ユキちゃんも私の手を掴んでくれました




「はぁ、はぁ、やっとついたね」




私たちは階段の恐怖を振り切って音楽室の前まで来ました




中は真っ暗なので、懐中電灯を照らします




ピアノは新しい校舎に移したのか、見当たりません




ほとんど何もない部屋なので、七不思議は無いのかな?と思った時です




「ポロンッ、ボン、チャン、ポロン」




どこからかピアノの音が聞こえてきました








「ここ、音楽室じゃないよ?」




急に声をかけられてびっくりした私たちは、窓の方に走った




「逃げなくてもいいじゃない?」




もう一度声を掛けられ、おそるおそる振り返ると、見覚えのある子が居た




「エミちゃん?」




ユキちゃんが声をかけると、「そうよ」と答えた




エミちゃんは、昨年に転校していった私たちの友達で、いつも3人で行動していた




「たまたまこっちに帰ってきたら、旧校舎に入っていくあんたたちが見えたから、ついてきたの」








「なんだ、それならもっと早く声をかけてよね!」




私は、バクバクする心臓の音を誤魔化すように声を出した




「ごめん、久しぶりだし、びっくりさせたくて」




「本当にびっくりしたんだから、違う意味で!」




エミちゃんは頭をかいた




「ところで、なんで音楽室へ行きたかったの?」




「そういえば、ピアノの音が止まってる?」




「あっ、それは私のラジオかも。クラシックを聴いてて」




エミちゃんの背負っているリュックの中からラジオが出てきた








「なんでラジオを持ってるの?」




「いろいろ便利なんだよ、スマフォの充電もできるし」




最近流行りのアウトドア用のラジオらしい




クラシックがさっき聞こえたのと同じ繰り返しの場所になったみたいだ




「ポロンッ、ボン、チャン、パン、ポロン」




「ねえ、さっきは拍手の音なんてあったっけ?」




「クラシックの音楽に拍手なんてあるわけないよ」




「聞き間違えじゃないの?」と言われれば、そうかなとしか言えない




エミちゃんはラジオを切った








「さっき、音楽止まってなかった?」




「あれ?そういえばそうかも」




エミちゃんは「気のせいじゃない?」と言うけど、気のせいでは絶対無いと思う




「やっぱり、どこかからピアノの音がしてたんだよ!」




「それなら、やっぱり5階の音楽室じゃない?」




私は、「あれ?旧校舎に5階なんてあったっけ?」と思ったけど、よく覚えていない




私たち3人は、よくわからない部屋を出ると、階段に戻った




「さっきの足音も、もしかしてエミちゃん?」








「そうかもしれないけど、分からないわ。」




いや、エミちゃん以外の足音だったら怖すぎる!私は考えないようにした。




5階へ上る時は、ギシギシギシと3人の足音しかしないので、やっぱり気のせいだったのかもしれない




5階へ着くと、音楽室と書かれたプレートが見えた。さっきの部屋はやっぱり音楽室じゃなかったみたいだ




音楽室へ入り、懐中電灯で照らすが、ここにもピアノは無かった




「やっぱり、変だね」




「うん、ピアノ無かったね」








「どこからピアノの音がしたんだろうね?」




すると、掃除用具入れの前にピアニカが落ちているのが見えました




「まさか、これの音?」




しかし、どうみても古いし埃をかぶっています




ピアニカに近づいた瞬間、掃除用具入れをガンッと叩く音がしました




「きゃーっ」




私たちは慌てて逃げ出しました




とりあえず廊下をまっすぐに走った私たちは、トイレに逃げ込みました




「はぁ、はぁ、あれ?エミちゃんは?」




「さあ?ユキちゃんは見てないの?」








「私は、逃げるのに夢中で見てなかったの」




すると、今度はトイレの個室からバンッと言う声が聞こえました




慌ててトイレから出ようとしますが、扉が開きません




バンッ、ババンッ、バンッ




トイレの床を叩くような音だけが響きます




洗面台の鏡から、バンッという声がしました




そちらをみると、血だらけの男性の顔が見えます




そこで私は気絶しました




目を覚ますと、どこかの教室のようです




「目が覚めた?」




目を開けると、エミちゃんがいました








「どこへ行ってたの?ここは?ユキちゃんは?」




私はエミちゃんに次々と質問しました




「ここは5年生の教室で、ユキちゃんは見てないよ」




「じゃあ、ユキちゃんを探さないと!」




私はエミちゃんがいたことで安心し、恐る恐るさっきのトイレに向かいました




ゆっくりドアを開けると、床に倒れているユキちゃんが見えました




「ユキちゃん!」




私がユキちゃんを抱き起すと、ユキちゃんは「うっ、カスミちゃん・・・?」




「大丈夫?ユキちゃん」

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