第50話 記憶喪失で

これは、公園であった女性の話です




その女性はとても綺麗で、30代には見えません




実際、20代の頃はモテたそうですが、男性と付き合ったことは無かったそうです




子供を遊ばせている間、彼女の昔話を聞くことにしました




ある日、交通事故にあったそうです




頭の打ち所が悪く、数か月間も意識が戻らなかったそうです




その女性の当時の話です








「あれ?ここはどこかしら。あなたは誰?」




奇跡的に意識が戻った私は、目の前にいた男性に尋ねました




「忘れたのかい?俺は君の恋人だよ、やっと意識が戻ったんだね!」




彼はうれしそうに私の手を握ると、ナースを呼んでくれた




私には記憶がなく、家族すら他人に思えました




彼は、私に「これが君の携帯電話だよ」とピンクの携帯を持たせてくれました




中には、彼の電話番号しか登録してありませんでした




彼に聞くと、交通事故で携帯が壊れたから、新しいのを買ったのだそうだ




私は数か月のリハビリを終え、退院しました




私は、一人暮らしだったらしいのですが、今は一人で暮らせるとは到底思えません




そう彼に伝えると、「じゃあ、同棲しようか」と提案してくれました




親も、毎日私の様子を見に来てくれた彼を信用していたようで、賛成してくれました




こうして私は、彼と2年間同棲し、結婚しました




次の年には子供も生まれ、数年間、幸せな生活が続いていました




私は、家の掃除をしていると、階段から足を踏み外して頭を強く打ってしまいました




その衝撃で、記憶が戻りました




「ここはどこ?私は、車に轢かれそうになって・・」




その音を聞いた男の子が、「大丈夫?」と聞いてきましたが、誰の子か分かりません




ポケットに入っていた知らない携帯には、やはり知らない人しか登録されていません




飾ってある結婚式の写真を見ると、私を轢こうとした車を運転していた男が写っていました




私は携帯を投げ捨て、見知らぬ街を走り抜け、交番に逃げ込みました




事情を話すと、親に電話してくれました




親に迎えに来てもらって、犯人を告げると、ひどく驚いていました




結局、あの男は私のストーカーで、事故に見せかけて殺そうとしていたそうです




その後、私は本当に優しい夫と結婚しました




男の子には可哀そうですが、私には他人の子にしか思えず、引き取ることはできませんでした




今は、新しい夫と可愛い我が子に囲まれて幸せです






そうしめくくった彼女は幸せそうでした




彼女は、晩御飯の準備に、子供と帰ろうと公園から出ていきました




すると、彼女の後ろから、彼女に向かって加速する車が見えました


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