第13話
殺害方法も犯人も全くつかめないままに四人の犠牲者を出し、おまけに四人目は警察官だ。
今後五人目の犠牲者を出してなおかつ犯人を捕まえられないようならば、警察の面目は丸つぶれだ。
現時点で警察の無能ぶりを追及するような意見を述べている報道もある。
――次で絶対になんとかしないと。
権藤はそう思った。
それは署内の人間、全ての想いでもあった。
満月が近づくにつれて、まわりは慌しくなっていった。
マスコミやネットでは世界規模で騒ぎになっているし、警察も完全に本腰を入れているようだ。
住人も身の危険が迫っている上に、騒ぎの中心で常に好奇の目にさらされていることもあり、精神的に追い込まれる人も出てきた。
一軒家を捨てて引っ越す人も何人かいた。
そこまでいかずとも満月の数日前から、あるいは前日から親族や知人の家、あるいはホテルに泊まる人も大勢いた。
そして当日、ここの住人は数百人はいたはずなのだが、どうやら数十人しか自分の家に残らない状態になったようだ。
雨宮は残った人間の一人だった。
雨宮は当日会社の上司から言われて、お昼には帰宅を許された。
早く帰ってなんだかの準備をしなさいと言うわけだ。
会社も当然のことながら、いまや日本中で知らない人はいないのではないかと思えるほどに有名になった住宅地に、雨宮が住んでいることは知っている。
会社としては、雨宮の心配と言うよりも雨宮に何かあったとき、会社のイメージが損なわれるのではないかと考えたのだ。
雨宮は午後一時には帰宅していた。
こんなに早く帰るのは初めてだ。
しかし雨宮は家から出なければ安全と考えて、上司からどこかに行くようにと言われたことを無視することにした。
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