第10話

そして満月の夜はやってきた。


当日はちょっとした戒厳令のようだった。


マスコミと野次馬は完全に排除され、住民にも要請の範囲ではあるが夜間外出禁止の旨が告げられた。


雨宮はその日、仕事が遅くなり家路についたのは午後九時を過ぎていた。


住宅地に車を乗り入れると警察に停められたが、免許書を見せてここの住人だと言うと「くれぐれも外出しないように」と言われたがすんなり通してくれた。


そして車を車庫に入れた。


車を降りて玄関に向かおうとしたとき、目の前になにかがいるのに気がついた。


それは女の子だった。一ヶ月前に見た。


――えっ?


すると女の子はあっと言う間に雨宮の視界から消えた。


街灯は少し離れていて、雨宮の家の明かりはまだついていない。


薄暗い中女の子を探したが、見つからなかった。


そのまま玄関に行き鍵を開けていると、なにかの視線を感じた。


見ればいなくなったはずの女の子がすぐ近くで雨宮をじっと見ていた。


雨宮は迷ったが、女の子に声をかけてみた。


「おじょうちゃん、誰? こんな時間に一人でなにしてるの?」


すると女の子が再び視界から消えた。


雨宮にはそれは、一瞬の出来事のように思えた。


――まさか、あの子……。


幽霊と言う単語が雨宮の脳裏に浮かんだ。

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