第8話

――!


雨宮は沸きあがる動揺、不安、好奇心、そしてなにに対してなのかは雨宮自身もよくわからない期待のようなもの、といった感情を押し殺して、そのまま風呂に入った。


風呂に入っている間に救急車とパトカーのサイレンが聞こえたが、雨宮は何事もなかったかのようにくつろぎ、そして寝た。



朝起きるとニュースでやっていた。


男が一人死んだ。


今度は電柱に叩きつけられて。


電柱には大きな亀裂が入ったという。


そしてニュースでは三ヶ月連続で不可解な殺人事件が同じ住宅街で起こり、それも三ヶ月連続で満月の夜に起こったと伝えていた。


――三回とも満月?


言われるまで雨宮は気がつかなかったが、どうやらそうらしい。


ニュースではまだなにか言っていたが、雨宮は事件が全て満月の夜に起きていることが気になった。


昔から月の満ち欠けと人間の心理状態とには、なんだかの関係があると言われてきた。


特に欧米ではそうで、狼男も満月を見て変身する。


英語にはルナティックという言葉がある。


ルナティックのルナは、ラテン語で月を意味する。


ルナティックを日本では、月の狂気と訳する人がいるが、英語圏で使われている意味は日本語にすると、そのものずばりキチガイと言う意味である。


それくらい月と人間の精神の関係が深いとされてきたのだ。雨宮は思った。


――そうすると、また同じことが起きるとすれば、次の満月の夜なのか?


それは雨宮だけではなく、ここの住人もマスコミも、警察までもが同じように考えていた。



権藤が検死官に聞いた。

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