それぞれの想い
コンコン
「失礼します。αとの話し合い、終わりました。早弁くんたちと話し終わったらボスのところへ来ると思います」
「そうか、ご苦労さん」
「それで、ボス。俺たちへのペナルティはあるのでしょうか?」
「ん? そんなにペナルティ欲しいのか?」
「いえっ、ない方が良いです。なぁ湊?」」
「......お、おぅ」
「湊?」
「......っあぁ、なんでもねぇよ」
「今回はセミメディ見習いを選抜した俺のミスでもある。よって、この件に関しては不問に処す。まぁなんだ、次はもっと上手くやれよ」
「はい!」
「じゃあ、今日は帰れ。はい、解散!!」
「なぁ......蒼。アイツもさ、チビだったよな.....」
「......あぁ、そうだよ。チビだったけど、ボールさばきは上手かった」
「......だよな。俺思い出したんだ。αが『背だけ高いからっていい気になりやがって!!』って言ったの聞いて......。たしかアイツも俺が背が高いことを僻んでた。俺は中等部の頃、そんなにサッカーが上手いわけじゃなかった。背が高いだけでポストプレー向きだって言われてフォワードに抜擢されたけど、
身長差がなかったら俺よりアイツの方が向いてた。しかも、俺が神宮寺グループの人間ってこと監督が知ってたから、優遇されてたんだよ。それが嫌で嫌で、上手くなりたくて練習しまくった。でも、アイツにはそう見えなかったんだよな、たぶん」
「......それは違う。アイツはちゃんと分かってたよ、湊が人一倍も二倍も練習してたこと。それに家のことで苦しんでたことも分かってた。でも、煮え切らなかったんだろうな。湊がどんどん上手くなって技術も自分に追いついてきて、レギュラー選抜の時は相当焦ってたんだと思う」
「......そうだったのか」
「あの時、アイツは、アイツ自身が一番許せなかったと思うよ。なんで衝動的にこんなことしちゃったんだろう?って顔してた」
「負けず嫌いだったし、真っ直ぐだったからな......」
「俺、今でも後悔してる。あの時アイツを止められなかったこと。アイツに寄り添ってやれなかったこと。今回もそうだ。αが報告してこなくなった時点で、怪しむべきだった。なのに、気付いてやれなかった」
「それは仁だって気付いてなかっただろ? 俺たちが気付けないのも無理ないんじゃねぇか?」
「......あぁ。だが、俺は洞察力でボスに買われている」
「それは、そうだろうけど......」
「......でも!湊が言った通りグチャグチャ言っててもしょうがない。だから、これからは見落としがないようにしたいと思ってるし、相手が何考えてるのかって言うのも場合分けして考えてみようと思ってる。前回も今回も、倒れさせてすまなかった。それから、湊。話は変わるが、サッカー勝負なんで1引き分けか覚えてるか?」
そういや、なんでだっけ?
「あれは俺が勝手に引き分けにしたんだ。レギュラー選抜の時の試合を。だから、今度白黒つけにアイツに会いに行かないか?」
「いいぜ?」
「.......これからもよろしく頼む、相棒!」
「おぅ! 任せとけ!」
.......ん? あぁ、もう一個思い出した。俺、仁にこう言われたんだ......
「それから、友だちを大事にしろ、お前は一人じゃない」
その時は、記憶とんでてなんでそんなこと言われたのか分かってなかったけど、蒼もアイツも意外と俺のこと、ちゃんと見てたんだな。コソ練してるところとか、バカみてぇに家のことで悩んでたこととか、気付かれてたのか。.......なんかむず痒っ!
「なんか言ったか?」
「......いや? お前も俺のこと大事にしろよ?一人じゃねぇんだから!!」
「......っえ? っえ? なんか、みなちゃんが優しいっ♡ しかも、大事にしろって...っえ? やっぱり、おじさんじゃなかったら俺も対象に入るのか?......っえ? キャー!!! 明日は雪よ~♡ スノーブーツ出さないとっ!」
「.......オイオイ、キャラ崩壊してんぞ! それワザとやってんだろ? しかも、お前はおネェキャラだけど、対象は女だろ? 俺、結構真面目に言ったんだけどな.....言って損したパターンか? これ......」
「.......心配してつけてきてみたら......また、バカやってるよアイツら。ま、バカやって笑ってられるのは良いことだ......将来メディエーターになるならなおさら、な。励めよ、湊、蒼」
その頃、生活指導室では....
「......雅さん」
「なぁに~?」
「メディエーターって何なんすかね?」
「そんなのセミメディ見習いに選抜された時、教えられたでしょ?」
「そうっすけど......。俺は今回自分でやったことを踏まえて、こう考えたんすよ......。メディエーターは感情を100%コントロールしなきゃいけないんじゃないか......って。それって、無理っすよね?」
「......んー? 無理じゃないわよ?」
「え?」
「現実にそういう人は存在するんだよ、αくん」
「.......そんな人、本当にいるんすか? 誰っすか?」
「それは教えられないよ~」
「そうっすよね。俺はたぶんもう関係なくなりますもんね」
「そうだね......君はもうセミメディ見習いとしてはここにはいられないと思う」
「......ですよね。さっき蒼さんに同じようなこと、言われたのでわかってるッス」
「......ま、結構身近にいるわよ、20年以上孤独に浸って感情殺してる人が」
「......っそれって!」
「はいこの話はおしま~い!! 落ち着いたなら、さっさと早弁くんたちんとこに行きなさーい」
「......了解ッス」
バタン
「あの人はいつまで孤独に浸ってるつもりかしら......? 」
To be continue
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