反応が鈍いのは君のせい

ガラガラガラッ.....

 

 あー、やっぱりいた。相変わらず来るの早いな。


 次の日の早朝、学園内で俺が探していたのは、この無防備な寝顔を教室でかましてる湊。湊は家だと熟睡できないらしく、初等部の頃からこうして早く学園に来て寝ていることが多い。

 

 それにしても、教室にイケメンが一人、爆睡してるのを女の子たちが知ったら、どうなることやら......。特に渚なんかは『ずっと隣で見てるだけで幸せ~♡』とは言わないだろうが、そんなようなことを顔から駄々洩れさせているだろう。


 さて、そんなことより......俺がわざわざ朝早く起きてここに来たのは、ある物を湊に見せるためだ。寝起きには刺激が強いかもしれないが、まぁそれは許してもらおう......。


「みーなーちゃん!! おっはよぉー!! ......あら~起きないわねぇー。うーん。これはアレしかないわっ!」


 俺はあの耳をつんざくような音をたてるため、まずはティッシュを丸めて耳栓を作り、自分の耳に突っ込んだ。そして爪に白い粉がつくことを躊躇いながらも、慣れ親しんだ深緑色の板の前に立ち爪を立てた。


キギーィイイイイイー キギーィイイイイイッギギギ!!


「......んーぁ''? うるせぇな、ッオイ! やめろ! 今すぐにやめろっ!」


キギーィイイイイイー キギーィイイイイイッギギー!!


「聞いてんのか? やめないとイス投げるぞ?」


「あ~! やっと起きた~。おっはよー、みなちゃん♡」


「んぁんだよ、おネェ!! 朝っぱらから黒板引っ掻きやがって......これなら家で寝てる方がマシだわ」


「あら、ごめんなさいね~?」


「......お前謝る気ないだろ? で、用件は?」


「コレをね、ちょっと見てほしいの♡」


「ん? なんだよって、うわ~、おネェがエロ本持って来てるよ。うわ~......」


 この反応、俺は確実に人選ミスを冒した。この渚バカに見せても何の反応も無いことが想像できただろうに......。


「......んー、あたしの人選ミスだったわ~。ちょっとぉ、みなちゃん! もう少し年相応の反応できないわけ?」


「うーん、悪ぃが見ても何とも思わねぇな」


「これっぽっちも?」


「あぁ」


「これが渚でも?」


「あ......はぁあ? な、なんで渚がでてくんだよ!!」


「あらっ? いい反応じゃな~い♡ やっぱりこうでなくっちゃね! ありがと~、じゃあまた放課後ネっ!」



ガラガラガラッ......


「一体、何だったんだ? こんな朝っぱらから......寝覚めわりぃな~、寝直そ」




 まぁ、渚一筋の湊があの反応なのは仕方ない。そして、俺も見てギャーギャー騒ぐタイプじゃない。一般的な男子高校生の反応が見たければ、やっぱりこの手しかないか~? あんまり使いたくないんだけどな......。



キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン


「おはよ~」


「ねぇねぇ、昨日のドラマ見た?」


「うん、見た見た~! 湊くん似の俳優さんめっちゃかっこよかったよね~」



「ハヨーッス」


「う~わ、何このエロ本!! 露出多すぎじゃね??」


「え~、どれどれ~?? うわー!! やっばこれ! 誰のだよ~」


「ちょっと男子ー、やめてよ朝から!! キモイー!!」


「はぁ? そういうお前らだって男の裸が写ってるブロマイドとかよく見てんだろ?」


「それとこれとはちがうしー!」



 おー、やっぱり年頃の男子高校生の反応はこうでなくっちゃね~。


 さて......ある程度落ち着きのある6年でこうなるってことは5年はもっと騒ぐはず。ということは、柚月のクラスでザワザワしてるのは、何か別の理由があるはずだ。ちょっと探ってみるか......? 


 うーん、変に単独で動いて、怪しまれるのも面倒だな......。それともボスに相談して、生活指導部として抜き打ちで持ち物検査をしてもらうか。


 まぁ、後者だな、そうすれば生徒会役員が手伝っていたとしても怪しまれないし、何より大義名分が立つ。


 放課後、ボスと湊に相談してみるか。




To be continue



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