第155話 2日目?-2
レ「それじゃあ、また後で。」
俺は7階までの方のダンジョンの前に陣取り、弥生は8階の方のダンジョンへ向かう。アヌビスとイルナはゲームコーナーへ向かった。
メ「こんなところで何をしている?」
レ「ああ、メィルか。そっちこそどうしたんだ? 何か用事があったんじゃないのか? ん? 少し身長が伸びたか?」
メ「無事確認を終えて戻ってきたところだ。その過程で身長は少し伸びたかの。」
身長だけじゃなく、少し大人びた顔になったメィルに一瞬心を奪われそうになったので、気合で取り戻す。何故か知らんが、こいつに惚れたら負けな気がするからな。そもそもこいつは恋愛対象外だ。
メ「弥生が8階へ向かったようだが、そこにいた悪魔は私が倒しておいたぞ。そして、私はこれからドラゴンの星へ向かう事にする。」
レ「そうか、8階の悪魔はメィルが倒したのか。これで不安材料が減ったな。」
今更ながら、なんで俺は弥生を8階へ向かわせたんだろうな。あそこに悪魔が居る事は知っていたはずなのに。ただ、メィルが何とかするという予感があったのかもしれない。
メ「もう少しで、一つの区切りがつくだろう。そしたら……お別れかの。」
メィルはボソリとそう言うと、こちらの返事を待たずに転移していった。
レ「お別れ、か。」
意識はしていなかったが、いずれそうなるとは思っていた。そもそも、今の状況は一時的な措置であり、いつになるかは分からなかったがまた本来の場所へ戻るはずだったのだから。ただ、こちらでの状況が変わりすぎて、何となくこのままでもいいかな、とは思ってしまった。それが、綺麗になったメィルを見たせいだとは思いたくないが。
レ「っと、それはともかく、今度はキチンと倒されない分裂体を作らないとな。」
触れなければ変化できないドッペルスライム対策に、ガーゴイルあたりを当てる事にする。そして、6階は自分で戦うことにした。何となく、戦う事で他の事を考えなくて済むようにしたかったからだ。こちらのヒノトリはイルナが今使っているヒノトリとは別物だし、気にすることも無い。
……俺は何故忘れていたのだろう、こいつの存在を。ダンジョンの奥から現れた、ボンテージに鞭をもつ女、そう、ブラッドサキュバスを。
ブ「オホホホホ、ちょっとごついワンちゃんね。まあいいわ、久々の獲物だもの。魅了!」
レ「げっ、こいつは……! 帰還の巻物!」
魔力を上げていたおかげで魅了に抵抗する事に成功し、無事に巻物を使って帰ってくることが出来た。それより、急いで助けを呼ばないと!
レ「ラヴィ様……は魔界へ行っていないか。ケルベロちゃん……じゃ勝てないし、ワルキューレは論外だ。メィル、おーい、メィルー!」
聞こえるのかどうかは知らないが、とりあえずメィルを呼ぶ。しかし、メィルは現れなかった。当然か、さすがにドラゴンの星まで声が聞こえる訳も無いわな。仕方ない、フロントへ向かうか。
フロントに行くと、ラヴィ様が外出中の為、今日の受付当番らしいリリスが居た。リリスの姿がサキュバス……しいてはカリヴィアンとかぶり、嫌な思いが顔に出る。
リ「いきなりどないしたん、そない嫌そうな顔をして。うちに何か恨みでもあるん?」
レ「いや、そういう訳じゃない。ちょっと全裸に近いマッチョを思い出してしまってな。」
リ「全裸に近いマッチョ……それは嫌やろうけど、なぜうちを見てそれを思い出すん?」
レ「それには深い訳が、それより緊急事態だ! ラヴィ様かメィルに連絡は着かないか?」
リ「ラヴィ様は忙しいからあまり連絡を寄越さないで頂戴って言われてて連絡しづらいんで、メィルちゃんでいい?」
レ「どっちでもいい! 早く!」
リ「せっかちやなぁ。とりあえず、通信機、通信機っと。」
リリスはフロントの奥にある電話を取ると、内線をかけるかの様にポチポチと番号を押す。
リ「あっ、メィルちゃん? 何かメィルちゃんに連絡を取ってくれって言う人間が来とるんやけど。うん、そう。ダサいオス。」
あのー、聞こえてるんですけど! 悪かったな、スーツ姿がダサくて! そして、リリスが通信機の口の部分を押さえてこっちに話しかけてくる。
リ「メィルちゃん、今忙しいんやって。どうしてもならすぐ来るそうなんやけど、どないする?」
レ「女神ランクⅡ相当の悪魔って言ったら分かるか?」
一瞬でリリスの表情が変わる。見習い女神だけあってその危険度はすぐにわかったようだ。
リ「そない化け物……、メィルちゃんじゃあかんやん、ラヴィ様に連絡を取らないとだめや!」
そう言って通信機を切ろうとしたが、この声が聞こえていたらしく、リリスが通信を切る前にメィルが転移してくる。
メ「そんなうまそうな話し(経験値)、どこにおるのだ?」
リ「何言ってんの?! 女神ランクⅡ相当の悪魔ゆうたらここらじゃラヴィ様しか相手にできんやんか! そのオスの言う事がホンマやったらうちらも殺されてしまうんよ!」
メ「女神ランクⅡなら丁度いい。私は今、女神ランクⅢだからな。」
リリスは訳が分からないという顔をする。理解が追いつかないおかげで、逆に冷静さを取り戻したようだ。
リ「メィルちゃん、うちは鑑定を使えんからステータスは見れへんけど、女神は嘘をつけんから、どうやってかは知らんけどそれがホンマの事だとしても、女神ランクⅡはⅢよりも格上なんよ? 大丈夫?」
確かに普通なら女神ランクⅡは女神ランクⅢでは絶対に勝つことが出来ないはずだが、女神ランクⅤのメィルが女神ランクⅢのルバートをあっさりと倒すのを見ている。それに、8階の悪魔も倒しているらしいし、女神ランクⅢになっているならその強さは本物だろう。だが、鑑定の使えないリリスではメィルの言葉が信じられないのも分かる。昨日まで見習い女神仲間だったのだろうからな。
そして、リリスは思い出したかのように通信機の番号をポチポチと慌てて押す。おそらくラヴィ様にかけたのだろう。
リ「はよー、はよーでてーなラヴィ様。このままじゃうちら殺されてまう。ああもうアカン、留守電になったわ! こうなったら、うちはもう何も聞かへんかった! 何も知らんねん!」
リリスは、俺からの報告を嘘ということで居直ることにしたらしい。いくら恐怖があったとしても、ここから勝手に逃げ出すことは出来ないのかもしれない。
メ「リリス、逃げたかったら逃げても良いぞ? 私が受付を変わろう。」
リ「ホンマ?! それなら……でも、あんたもそのオスと一緒に現場に向かうんやろ? だったら、結局ここを空けるわけには行かんし……えーい、うちも女や、あんたらの調査が終わるまでここにおったるわ! ラヴィ様の折り返し電話に出なかったら後が怖いし。」
最後の最後にボソリと呟いた言葉が無ければ格好よかったのだが。まあ、その責任感だけは褒めてやったほうがいいか。
レ「ありがとう、助かる。それじゃあ俺達はダンジョンへ入る。」
リ「ホンマにあかんかったら、逃げても誰も文句言わんから、無事帰ってくるんやよ。うちも待っとるわ。」
メ「ああ、頼んだ。」
俺はメィルにダンジョン6階と告げ、それを聞いたメィルと共に転移する。6階に戻ると、キョロキョロと辺りを見渡しているブラッドサキュバスが居た。
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