第151話 1日目?-6

ア「何を遊んでおるのじゃ?」

レ「助かった! あいつを倒してくれ!」


ゲームを終えたのか、こちらに合流したアヌビスにスライムを任せる。スライムは新たに現れたアヌビスを敵と判断し、魔法や触手で攻撃してくる。アヌビスに0ダメージ。


ア「なんとも巨大なスライムなのじゃ。イルナにゲームで負けて溜まったストレスを発散するのじゃ。とりあえず、触手を斬るかの。」


アヌビスは体にエロく巻き付いた触手を手刀で叩きつけると、触手は縮んで本体に戻る。ダメージカット、ジャイアントキングスライムに115ダメージ。


ア「そうか。この世界では欠損ダメージが無いのであったな。それにしても、ダメージが低いと思ったらやっかいなスキルを持っておるのじゃ。」


1万を超える攻撃力を持つアヌビスであっても、ダメージを99%もカットされると物理攻撃で倒すのは無理そうだ。スライムは1分で10000以上HPを自動回復しやがるからな。


ア「それならば、闇の球!」


デーモンクラスの悪魔ですら1撃で倒すアヌビスの闇の球が、スライムの中心に当たる。ダメージカット、ジャイアントキングスライムに1988ダメージ。


ア「うーむ、倒すのはなかなか厳しいのじゃ。」


物理攻撃も、魔法攻撃も両方1%のダメージしか与えられないとは。下手な防御力を持ったモンスターよりよっぽど凶悪なスキルになっている。スキル所有者のミスリルスライムですら女神候補も苦戦するモンスターなのに……。


終わった、俺達の冒険はこんなモンスターに立ちふさがれて終わるのだった。


イ「……私に任せて。毒の霧を使うから、早く離れて。」

レ「わ、分かった! 弥生、アヌビス、離れるぞ」


俺達は慌ててイルナから離れる。毒の霧は確か、最大HPの10%ダメージの固定ダメージのはずだ。イルナは俺達が離れたのを確認すると、毒の霧を使ったらしく、イルナの付近が緑の霧に包まれる。状態異常、ジャイアントキングスライムは猛毒になった。ジャイアントキングスライムに4000ダメージ。ジャイアントキングスライムに4000ダメージ。ジャイアントキングスライムに4000ダメージ。……ジャイアントキングスライムに4000ダメージ。ダメージは継続して当たっているが、倒れる様子は無い。


ヤ「ダメですね。毒の継続ダメージよりも自己回復速度の方が早くてHPが減っていません。」

レ「イルナ! 毒の霧を解除して戻ってこい!」

イ「……まだ、やれる。」


イルナは毒の霧を解除したものの、そのままスライムに向かって行く。スライムはアヌビスの時と同様に魔法と触手で攻撃してくる。物理無効、イルナに0ダメージ。魔法無効、イルナに0ダメージ。死者の杖の効果で物理無効、死者の衣の効果で魔法を無効化しているが、ダメージはともかく触手はイルナに絡まってきた。


イ「……やっ、あっ!」


触手が死者の衣の中に入り込むと、そのままスポッと脱がされる。衣を脱がされて、メイド服姿になったイルナにスライムの魔法が命中する。イルナに0ダメージ。それでも魔力はイルナの方が上のため、ダメージは無いようだ。


イ「かえっ、してっ!」


イルナはピョンピョンとジャンプして衣を取り返そうとするが、スライムは触手をふりふりして取らせない。さらに追い打ちをかけるかの様に飛行し始めた。


イ「……うぅっ。」


スライムはさらに、死者の杖まで取り上げようとしてきたので、イルナはこちらに半泣きで退避してきた。


ア「仕方ないのじゃ。取り返してくるかの。闇の球!」


魔法無効、ジャイアントキングスライムに0ダメージ。触手が衣を着たと判定されているのか、唯一ダメージの多かったアヌビスの魔法すらダメージを与えられなくなった。さらに悪いことに、無効化の場合はノックバックすら発生しないので、魔法の風圧で死者の衣が脱げる様子も無い。それに味を占めたのか、スライムは死者の衣をそのまま体内に取り込んでしまった。これではもう、脱がすことは不可能だな。やはり、俺達の冒険はここで終えるのか。


ケ「何をしているのですか? ワン。」

レ「ケルベロちゃん!」

ケ「? そうですが、何故あたちの名前を知っているのですかワン?」

レ「と、とりあえずそのスライムを倒してくれ!」


ケルベロちゃんは怪訝な顔をしたが、とりあえず邪魔なスライムを排除することにしたらしく、スライムの目の前?に一瞬で近づくと、掌底をスライムの胴体に打ち込んだ。ダメージカット、ジャイアントキングスライムに40465ダメージ。ケルベロちゃんが一瞬、「ほぉ、あたちの攻撃でこの程度のダメージとは」と凶悪な笑みを浮かべたのも束の間、スライムは吹き飛んで壁に当たり、コアになった。そのコアをケルベロちゃんが拾う。そのコアを俺にくれとはとても言い出せないな。


ケ「やっとこっちへ戻ってきて冒険者たちを迎えに来てみれば……これは、一体何だったんですかワン?」

レ「それが、ヒュージスライムが突然変異を起こしたみたいで、俺達にも何が何やら。」


と誤魔化しておくことにする。正直に俺が原因ですって言うと俺が殺されかねない。それに、今のケルベロちゃんはちょっと他人行儀っぽい話し方で話しかけづらい。まあ、会ったばかりだから当然か。以前のファーストコンタクトは、メィルがやらかしたおかげでケルベロちゃんの素がでて、一気に他人行儀さが無くなったからな。


ケ「そうだったのですかワン。ところで、あなた達も冒険者ですかワン? ビジネスホテルに案内しますワン。」


俺達はケルベロちゃんに連れられてビジネスホテルに向かう。案内が無くても行けるけど、勝手に行くわけにはいかないし、勝手に行ったとしても不審者として殺されかねない。あれ、何気に殺される確率高くね? まあ、勝手な思い込みなんだけど。


ケ「こちらですワン。部屋の希望はありますかワン?」

レ「どうせなら、4人一緒に泊まれる部屋はあるか?」


以前は俺と弥生だけだったので、最初は2部屋別々にしたけど、その後はワルキューレの闇の壁があったとはいえみんなで同じ部屋を使っていたのだから、今回は最初から一緒でいいと思う。一応、弥生の顔も見たが「なんですか?」くらいに首を傾げただけなので文句は無いと思う。アヌビスとイルナについては、そもそも何か言うとは思えない。


ケ「ありますが、エッチな事をする場所ではありませんので、変な反応があったら叩き出しますワン。」

レ「そんな事しないよ! なっ!」


俺は皆を見渡すと、弥生は考えがそっち方面に及んでしまったのか、顔を赤くして背け、アヌビスとイルナは「なにそれ? それっておいしいの?」的な反応だった。


その後、食事の話や、備品等の話を終え、部屋の鍵を渡された。そこは前回みんなで使っていた部屋なのでよくわかる。


レ「あ、そうだ。分裂! こいつを番犬代わりに使ってくれ。名前はそうだな……サーベラスでどうだ。」


俺はケルベロス型の分裂体を作ると、ケルベロちゃんに渡す。元の世界では結構仲良くやってたみたいだから、こちらでも気に入ってくれると良いな。


ケ「……悪くない名前だと思いますワン。ありがとうございますワン。」


ケルベロちゃんは一瞬やさしい笑顔になったが、慌てて仕事の顔に戻す。


ケ「それでは、ごゆっくりどうぞ、ワン。あ、申し遅れましたが、あたちはケルベロと言いますワン。ケルベロちゃんと呼んでくださいワン。」

レ「分かった。ありがとう、ケルベロちゃん。」


俺は丁寧にお辞儀をするケルベロちゃんに手を上げると、皆で部屋へ向かった。部屋割りは前回と同様にした。寝るときは、やはり闇の壁を張ることになったので、アヌビスがワルキューレの代わりに張る役だ。

それから、風呂にアヌビスが突入しようとするハプニングや、イルナが闇の壁を張る前に服を脱ぎだすハプニングがあったが、無事、弥生が阻止してくれたため何事も無く1日が終わった。が、夜中にトイレに起きた俺に、寝ぼけた弥生が浴衣をはだけさせた状態で着いてきたのにはびっくりさせられた。恐らく明日の朝まで覚えてはいまい、いや、覚えていないといいな。

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