第139話 地球-3
面倒ごとを避けるために、一旦人気のない路地裏に入る。すると、知らない女の子の声が聞こえた。
コ「ちょっと、そこのあなた達!」
レ「え? 声はすれども姿は見えず。頭の中に直接話しかけてる系か?」
ヤ「いえ、普通に透明化してるんじゃないですかね?」
レ「ここは地球だぞ? どっかにマイクでも置いてあるのか?」
コ「ふっふっふ、あなたたちの頭の中に直接話しかけているのです!」
レ「んー、どっかこの辺から聞こえる様な……。」
ムニュ。見えないが、何か柔らかい物が目の前にあるようだ。ムニムニムニ。
コ「なにするですか!」
レ「げはっ!」
俺は急に顔面を何かに強打されてふっとぶ。……電車にひかれるよりは全然大丈夫だな。
コ「あわわわわ、やっちゃったです! 始末書ものです! 急いで蘇生しないと!」
レ「いや、大丈夫だ。ダメージはない。」
コ「なんで大丈夫なんですか! あたしは本気で殴ったですよ!」
レ「そう言われてもなぁ。ところで、そろそろ姿を見せたらどうだ?」
コ「本来は簡単に姿を見せるものじゃないのですが、あなたたちは普通じゃないのでお詫びも兼ねて姿を見せるです。」
そう言うと同時に、小学生並みの身長でローブの様な服を着た美少女が空中に浮いていた。少し顔が赤いのは怒りのせいか、変な所に触ったせいかは知らないが、メィルの同族っぽく背中に小さな羽が生えている。
コ「あたしの名前はコレ=ミンです。この星の女神なのです。敬うのです!」
コレはそう言うと、Aカップほどしかない胸を張って威張る。地球の女神ってこいつなのか?
ヤ「地球の女神様ですか? 私たちに何か御用ですか?」
弥生は信じたらしい。まあ、本物だろうが偽物だろうが俺達には関係ないか。いや、関係あるな。
コ「この星でスキルを使う反応があったから見に来たのです。この星でスキルを得たもの、星外から来たものには自動的にスキルを使わないようにな脳内に警告が流れたはずなのです!」
レ「いや、警告なんて無かったぞ?」
コ「そんなはずないのです! はっ、あなた達人間じゃないのですね!」
レ「いや、人間だけど……鑑定は使えないのか?」
コ「なぜそんなにスキルに詳しいですか! ますます怪しいのです!」
俺としてもコレが本当に女神かどうか疑ってるんだけどな。仮に最弱の女神のメィルですら女神なら俺にノーダメージということは無いはずだ。
レ「俺たちは、一応見習い女神のメィルに異世界召喚されたからな。スキルはそこで付与されたんだ。」
コ「メィル? 知らない名前なのです! 適当なことを言っても騙されないですよ!」
レ「いや、こういうやつだ。分裂。」
俺はそう言ってメィルを分裂で作り出す。あっ、ついくせでステータスまでメィルと同等にしてしまった。……俺って見習い女神レベルを作り出せてしまうんだな。なんかやばい気がするな。
メ「はーい、メィルちゃんです! 何か御用ですか? お兄ちゃん。」
コ「あっ、勝手にスキルを使うなです!」
ヤ「本物のメィルちゃんみたいです!」
レ「あー、つい本物っぽく作ってしまったな。性格は俺の想像な上にスキルも無いけど。」
コ「とりあえずこれは排除しますです!」
コレはそう言って分裂体のメィルを殴る。メィルの分裂体は近くにあった金網フェンスにめり込んだ。
コ「いったーい! ナニコレ、固いです!」
コレはそう言って手をフーフーと吹いている。最弱のメィルすら倒せない女神とか居るのか?
レ「……お前、女神じゃないだろ。」
コ「ギクッ! な、何を根拠にそんな事を言うんですか! 証拠はあるんですか? 証拠は!」
ヤ「その発言がすでに認めてるような気がするんですが……。」
メ「よくもやったわね! お返しよ、えーい!」
話しを聞いて居なかったようで、分裂体メィルは勝手にコレに攻撃をする。スキルが無いからただのパンチだが。
コ「ぐふぅ、よ、よく……も。」
コレはパンチされたお腹を押さえ、しばらくプルプルしていたが、気絶したようだ。
レ「……どうしようか、これ。」
ヤ「コレだけに……ぷっ。」
弥生は何かツボにはまったらしく、腹を押さえて笑っている。さて、目立つのもあれだし、適当に分裂体で包んで一旦家に帰るか。
家に帰ると、丁度コレが目を覚ましたようだ。
コ「ここはどこですか!? あたしをどうする気ですか!」
レ「いや、どうもしないけど。とりあえず気絶してたから目立たないように家に連れて来ただけだぞ。」
コ「あたし、お持ち帰りされた!? た、助けてください、女神様!」
レ「何もしないから落ち着け! あと、やっぱりお前は女神じゃないじゃないか。」
分裂体の包みを壊すと、中でグスッグスッとコレが泣いていた。
メ「泣いてるの? えー、女神なのに泣いてるのー?」
メィルの分裂体が追い打ちをかける。メィルってこんな性格だっけ? いや、俺の想像の性格はこんな感じだな。
ヤ「このメィルちゃんはもう片付けましょう。投擲!」
弥生はアイテムボックスから手裏剣を取り出すと、分裂体メィルに向かって投げる。そして、消滅した。
コ「ひぃっ、こ、殺さないで! 分かりました! 嘘をついていてごめんなさい! あたしは、いえ、わたしはこの星の見習い女神ですぅ。」
今にも号泣しそうに目にいっぱい涙をためてコレはそう叫ぶ。
レ「殺さないから落ち着け。」
コ「ほ、本当ですか……?」
自分が倒せなかった分裂体メィルを、弥生があっさり消滅せたのでそうとうビビっているようだ。上目遣いに目をウルウルさせている。
ヤ「本当ですよ。今度嘘をついたらどうするかは分かりませんが。」
コ「ひぃっ、ごめんなさい! 嘘つきません!」
確か、女神は嘘をつけないはずなので、見習い女神かどうかすら怪しい所だが。まあ、とりあえず話を聞くか。
レ「それで、俺達に何か用か?」
コ「女神さまから、地球にスキルの反応があったので調べてこいと言われたのは本当です。ごくたまにですが、原住民が何かの拍子にスキルを覚えたり、次元をまたいで何かが現れたりすることはあるのです。けれど、大抵はあたしでもなんとかなる程度の問題しか無いはずなのです。」
まあ、コレの手に負えないような問題に送り込むようなやつは居ないと思うな、たぶん。無茶ぶりする上司というのも微レ存だが。
ヤ「それで、私達をどうするつもりだったんですか?」
コ「本来は、透明化をしたまま事情を聴いて、あとは女神さまの判断に任せる予定だったのです。原住民を勝手に殺したりしたら始末書なのです!」
レ「……始末書で済むのか。」
コ「? 人間も、犬や猫を殺した程度では死刑にならないはずです?」
ヤ「そういう認識なんですね……。」
まあ、そういうものかととりあえず納得しておく。文句を言ってもどうしようもないからな。
レ「それで、これからどうなるんだ?」
コ「あたしが解決できる範疇を越えているので、女神さまに連絡をとるです。ちょっと待っててくださいです。」
そう言ってコレはアイテムボックスから通信機の様なものをとりだすと、かけた。
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