第138話 地球-2

結局晩飯だけを買い、布団は変化で作ることになった。金を下せていないからな。備品なども変化で作り……ってやっぱり変化って便利だよな。


ヤ「覗かれるのが怖いので、透明化をしてお風呂に入ります!」

レ「いや、そんなに堂々と宣言されても覗かないって。」

ヤ「ラッキースケベとかありませんか?」

レ「誰も居ないから無いだろ!」


風呂に入り、レトルトカレーを温めて食べる。やっぱり久々の日本のレトルトはうまいな。歯磨きをして、寝る準備は完璧だ。


ヤ「ついたてが無いので、透明化して寝ますね!」

レ「好きにしてくれ。」


さすがに寝る場所は一緒の場所しか空いていないので、弥生が気が済むように好きにさせた。おやすみ。


ヤ「おはようございます、源さん。」

レ「おはよう。」


俺の目が覚めると、6時半だった。弥生はすでに着替えており、変化させたのか普通の……忍者服じゃない洋服になっていた。新鮮な姿にじっとみてしまう。


ヤ「あっ、すいません、今食パンを焼きますね!」


弥生は朝食の催促だと思ったのか、キッチンへ向かう。変化でエプロンを作り、フライパンを出して目玉焼きを作り始めた。あっちじゃ料理はほとんどケルベロちゃんかはじまる様に用意してもらったからなぁ。なんか新婚生活みたいだ。そう思って、急に恥ずかしくなった。……悪くないと思う俺がいる。


ヤ「できましたよ!」


俺が妄想している間に準備ができたようで、テーブルに食パンと目玉焼き、コーヒーが並べられていく。

レ「いただきます。」


飯も食い終わり、銀行が開くまで暇だなと思っていた8時過ぎ、電話が鳴った。


レ「はい、源です。」

課長「おお、源か。事故に遭ったって聞いたけど、声は元気そうだな? そこで悪いんだが、ちょっと仕事が立て込んでてな。できる範囲でいいから仕事をして欲しいんだ。」

レ「えっ、しばらく休むって連絡したのにですか? 診断書も郵送しましたよ。」

課長「悪い悪い、でも、骨折とかは無いんだし、できる範囲でいいからさ。」

レ「……分かりました。ちょっと考えさせてください。」

課長「頼むよ。」


ガチャリと受話器を置く音がして電話が切れる。


ヤ「お仕事ですか?」

レ「正直、仕事に行ってる場合じゃないんだよなぁ。」


特に何かがあるわけではないが、何かあった時に対応できないのは困る。


レ「そうだ! 分裂!」


俺は、俺そっくりというか、ほぼ本人というか、俺の記憶を全て移した分裂体を作る。ステータスは何かがあって消滅したら困るので、ステータスをHPは100くらいで防御力を常人の2倍程度にした分裂体にした。

体感では、恐らく車に轢かれても消滅しないと思う。


ヤ「わぁ、源さんそっくりですね!」

レ「そうだろ? よし、分裂体、仕事へ行ってこい!」

ヤ「あれ、それ使えばバイトし放題……?」

レ「源泉徴収とかでバレルからやらんぞ。」


仕事へ行く分裂体を見送り、俺達は銀行へ向かった。一応、昨日強盗があった銀行とは別の銀行にした。


レ「それにしても、俺達のステータスは地球じゃ異常すぎるよな、拳銃の弾が余裕で避けれるし、当たっても無傷だし。」

ヤ「やらないですけど、それを言ったら私の透明化で怪盗とかできますよ!」

レ「それで仮に指紋とかで見つかっても、刑務所からの脱獄なんて余裕だろうなぁ……。」


試しに、道に落ちていたコンクリートのかけらを握ると、あっさりと粉々になる。空気抵抗が違うのか、本気を出して走ると普通の服が持たないからやらないだけで、マッハを越えるのは余裕かもしれない。

日中の東京をぶらぶらするのは、営業以外では久しぶりだな。ちなみに、俺の仕事は事務に近いからどっかのクモ男みたいにスクープを取るのにステータスを生かす!ということは出来ない。いや、転職すればできるんだろうけど、今のところ必要性を感じていないな。どうせ今日の電話も、めんどくさい入力の仕事とかだろうし。


レ「さて、気分を変えて昼飯をちょっといいところで食うか?」

ヤ「それなら、中華とかですかね? テレビでビリが全額払うような番組のお店とか。」

レ「ちょっと高い気もするが……まあいいだろう。久々の地元だからな。」


まあ、俺自身もそんな高い店に行ったことは無いが、異世界に行った身としては、地球で金を貯めてても意味がないなと感じたところだ。それに、いざとなったら日雇いの土木作業だろうが苦も無くできそうだし。下手したら重機以上に働けるかもしれない……目立ちすぎるからやらないが。

すると、キキキーと急カーブしてきた車がこちらに突っ込んでくるのが見えた。俺と弥生は、普通の人間としておかしくない程度のスピードで避ける。車は、ガードレールにぶつかって止まった。さすがに2日連続で、無傷で病院へ行きたくないからな。


レ「大丈夫か?」


一応、運転席のエアバッグのおかげで、運転していた男性に目立った怪我はなさそうだ。


男「うぅ、警察か? 死ねや!」

レ「うわっ!」


男は急にナイフを取り出すと、突き刺してくる。驚きながらも、ナイフの刃を人差し指と親指で挟んで止める。


男「何?! 離せ!」


危ないので、刃をパキリと折っておく。すぐにパトカーが到着した。


警察「大丈夫ですか? 追跡を振り切られてしまって。」

レ「そうですか。私は怪我どころか、触れられてもいないので大丈夫です。」


面倒ごとにならないように、ナイフの事は黙っておく。被害届を出すために警察に行くとか勘弁してほしいからな。弥生も口裏を合わせてくれたので、特に何事もなく解放された。


レ「昨日からやけに事件に巻き込まれるな。」

ヤ「神様関係ですかね? 地球で私たちをどうにかできるものがあるとは思えませんが。」

レ「いや、フラグは立てなくていいから!」


万が一、ここに悪魔が転移してきたりしたら本当にアウトだからな!

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