第134話 決着

ラヴィが先に向かったのはワルキューレの所だった。一応ケルベロには、ワルキューレに物理無効と魔法無効化の装備の使用を認めていたとはいえ、ワルキューレが使う前に攻撃される、もしくは装備をはがされて攻撃される可能性があったため、封印を解いたケルベロならば例え2体1となっていてもすぐにやられることは無いと考えてワルキューレの助太刀を決めていた。まあ、気配がある時点でまだやられていないことは確定しているのだが。




ラ「ワルキューレ、無事の様ね。」


ワ「ラヴィ様!」




ワルキューレはこれ幸いにとラヴィの後ろに隠れる。オエイレットは苦い顔をしてそれを見つめる。




オ「ちっ、ソンネイロンのやつ、やっぱり負けた様ね。」




仲間がやられることを予想していたようで、オエイレットは慌てる様子はない。しかし、逃げる様子もないのはワルキューレよりは強いとはいえ、ラヴィには勝てないはずなので、その余裕は不自然だ。




ラ「それで、あなたは逃げないのね?」




ラヴィがオエイレットに手を向けると、オエイレットは口角を上げるだけで微動だにしない。ラヴィは怪訝な顔をしながらもカードを1枚飛ばす。すると、ステータス差であり得ないことに、オエイレットに当たる寸前でカードが弾かれる。




ラ「物理無効……ではないわね。結界ね。」


オ「そういう事よ。この星に張ってある結界を個人レベルで張ってもらっているのよ。」




この星に張られている結界は、神たちのアンテナに全く引っかからない。それが個人レベルにも付与されているとしたら、まるでステルスの様に悪魔達の行動を捉えることができないだろう。さらに、ラヴィですら破壊できない結界を防御に使われては、そもそも女神ランクⅠ以下では勝ち目が無いかもしれない。




サ「へぇ、それが僕達にバレずに女神たちを狩っている方法かな?」


オ「き、貴様は!」




転移で追いついてきたサンガがパチンと指を鳴らすと、まるでシャボン玉の様にオエイレットを包んでいた結界が割れる。




サ「さあ、やっちゃって、ラヴィちゃん。」




結界を割ることは出来るが、攻撃力自体は低いサンガではダメージを与えられないため、ラヴィに攻撃を任せることにして下がる。ラヴィはもう一度カードを構えると、オエイレットに投げる。投げられたカードはオエイレットに知覚されることなく胸に刺さる。クリティカル発生、オエイレットに19億3千万ダメージ。オエイレットはコアになった。ラヴィはオエイレットのコアを拾い、アイテムボックスへ入れる。


そして、ワルキューレの窮地を救い終わったラヴィは、次にケルベロの元へ転移する。転移した瞬間、カールーの拳がラヴィの目の前に迫る。ラヴィはそれを難なく左手で防ぐ。ラヴィに0ダメージ。カールーは驚いた顔をし、飛行で離れる。ラヴィは追撃よりも先にケルベロの無事を確認するためにケルベロのそばへ寄る。




カ「お前さん達が無事という事は、ソンネイロンもオエイレットもやられたという事かのぉ。」


ラ「間に合ったようね、もう力を封印していいわ。」




ラヴィにそう言われ、ケルベロは首輪をはめる。急に力を使ったせいで、なまっていた体が悲鳴を上げているようだ。ケルベロは安心感からか、ペタリと地面に座り込む。そこへワルキューレはケルベロに蘇生を使う。しかし、HPの減少以外は治る様子はない。肉体へのダメージはそう簡単には治らないようだ。




カ「オエイレットがやられたという事は、結界を解く方法でも見つけたのかの?」


サ「僕にかかれば、この程度の結界の解除なんてわけないよ。」


カ「そうか、とうとう下級神まで現れたんじゃな。……予定通りですか? ベルゼブブ様。」




カールーが虚空に声を掛けると、いつの間に居たのか、透明化を解いてベルゼブブが現れる。




ベ「ああ、これで元熾天使レベルの悪魔を復活できそうだ。」

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