第85話 アラクネ

ア「どうじゃ、零? 我も大分もどったじゃろ?」




アヌビスはポーズをとる。プロポーションが良くなったせいか、その姿にドキッとする。俺が返事をしないので無視されたと取ったのか、アヌビスは胸を腕に当ててくる。




ア「これならどうじゃ?」


ヤ「あわわ、ダメです! アヌビスちゃん離れて!」




弥生はそれを見てあわてて俺からアヌビスを引き離す。イルナはぼーっとしているように見えて、アヌビスの胸を見ていたのか、自分の胸をそっと押さえた。イルナはステータスが上がっても体形が良くなるわけじゃないからな。




エレベーターに戻ってきたことだし、ついでに飯を食う事にする。食堂に行くが、そこに居たのはケルベロちゃんだった。




ケ「こんにちは、ワン。何になさいますか?ワン。」


レ「なんでケルベロちゃんがここに?」


ケ「今日は、はじまる様が居ませんですワン。追跡スキルでこっちにくるのが分かったので先廻りしましたワン。」


ラ「私が頼んだのよ。」




はじまる様が居ないので、お昼はケルベロちゃんが用意するらしい。やっぱりラヴィ様は料理ができな・・。




ラ「できなくはないのよ?」




ラヴィ様が殺気を発したので俺達はその話題に触れるのをやめた。無関係のケルベロちゃんも殺気を受けて尻尾を下げている。俺をにらまないでくれ!




ケ「で、何にするんだ?」




ケルベロちゃんの態度が悪くなった・・・。すまぬ、みんな。




イ「・・・牛ステーキ。」




イルナはメンタルが強いのか、ケルベロちゃんを怖がっていないのか、普通に注文した。それに続いて他のみんなも注文する。




ア「ケルベロちゃんがいるなら、ホットケーキがいいのじゃ!」


ヤ「私もステーキが良いです!」


レ「俺は・・・。」


ケ「水ですよね?ワン。」




俺の前にドンッと水の入ったコップが置かれた。うぅ、何で俺だけ・・って理由は分かってるけど。




ラ「私は、キャロットパイをお願い。」




もう、俺は何も思いません! みんなが美味しくご飯を食べている横で、おれはチビチビと水を口に含むだけで昼食は終わった。




皆「ごちそうさまでした。」


レ「・・・。」




食器を片付けて、エレベーターに戻る。8階に到着すると、予定通りまっすぐの道を進む。真ん中は右で出たモンスターと、左で出たモンスターの両方が出るみたいで、サラマンダー、エキドナ、ミノタウロス、ギガースを倒して行った。ベヒーモスはあそこだけだったのか、見かけないというか、見えたらすぐわかる。




エレベーターはこの階の中心にあったようだ。壁に沿って探索していたら永久にたどり着けないパターンだ。木の間から見えるエレベーターは2mほどの箱だけが置いてある感じだ。そこへ近づいて行く。




レ「ぷはっ、なんだこれ?」




俺の顔にくっつくものがあった。顔をぬぐってみると、クモの糸の様だ。ダンジョンには虫なんか居ないので、おそらくモンスターだろう。




レ「弥生、付近を警戒してくれ!」


ヤ「分かりました!」




それを聞いてアヌビスも空中から見ようと木の間を抜けようとした。




ア「なんじゃ!・・・糸か?」




アヌビスは見た目空中に浮いたままでジタバタしている。すると、ガサリと葉が揺れる音がして、下半身がクモで上半身が美女のモンスターが現れた。胸は水着のブラみたいなものを付けている。弥生はチラリと俺を見た後に鑑定をした。どういう意味だろうか。




アラクネ(動物):HP60000、MP7000、攻撃力2800、防御力1900、素早さ1300、魔力2000、スキル:毒無効、毒攻撃、MP自動回復(小)、糸




アラクネは合成獣ではなく、そういう種類のモンスターらしく、エキドナと違ってしゃべることは無いようだ。アラクネは手からも糸が出せるのか、アヌビスに近づくとグルグルと糸を巻いていく。




ア「もがもが、もがー!」




アヌビスはあっという間に体を鼻の下までグルグル巻きにされた。意外にも、口をふさがれると魔法が使えないようで、転移して逃げる事ができないようだ。




ヤ「待っててください! 今助けます!」




弥生はワーウルフに変化すると、爪でアヌビスの糸を斬る。しかし、ステータスが糸にも反映されるのか、糸に0ダメージだった。糸は魔法扱いのようで、魔力の低い俺や弥生では破壊できなさそうだ。もしかしたら、糸自体にサイレントみたいな沈黙効果があるのかもしれない。




アラクネはお尻から糸を網状に飛ばしてきた。弥生はサッと避けたが、俺は糸に捕らわれる。俺は分裂を使おうと思ったが、分裂も使えなかった。沈黙どころかスキル無効化か!




レ「やばい、俺も糸から抜けられなくなった!」




アラクネは俺に近寄ると、アヌビスと同じようにグルグル巻きにする。そして、人間の様だった美女の顔が、口だけパクリと裂けたように開くと、首にがぶりと噛みついてきた。零に1200ダメージ。状態異常:毒




噛みつきが魔法扱いの毒攻撃だったようで、クリティカルは受けなかったが、代わりに毒を受けた。俺の肌が緑色になる。継続ダメージ500ダメージ。




ヤ「源さん!? 投擲武器操作!複製!」




弥生が新しく覚えた投擲武器の複製効果によって、1つだけ投げた手裏剣が10個に別れてアラクネを襲う。アラクネのクモの体に全部刺さるが、どこも急所では無いようだ。アラクネに570ダメージ×10。さらに、振動効果によってアラクネはよろける。その隙に俺は糸にグルグル巻きのままイルナの方へ転がっていく。継続ダメージ500ダメージ。




イ「・・・憑依。ヒノトリ。」




ちょっと考えるように首をかしげていたイルナは、思いついたようにヒノトリを憑依させた。




イ「・・・ボッ。」




俺の体を包むように火魔法を使うと、俺に巻き付いていた糸が燃え尽きた。零に200ダメージ。俺は以前にイルナから毒魔法を使った後に念のために用意しておいた解毒薬をカバンから出して飲んだ。

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