第82話 ダンジョン攻略14日目

ヤ「えっ、カジノが中止なんですか?」




そんな声に起こされた。




メ「何か大事件があったみたいだよ!」




メィルの声も聞こえる。俺が起き上がると、俺が起きるのが最後だったのか、ワルキューレが闇の壁を解除する。




メ「お兄ちゃん、やっと起きたの?」


レ「おはよう。何があったんだ?」


ワ「今日は完全に休日で、カジノもやらない。」




カジノは、ステータス補正の意味もあるはずだから、カジノをやらない理由は俺達のステータスが十分な時だけだ。


ワルキューレはそれだけ言うと、難しい顔をして、何か聞かれる前にとさっさと部屋を出ていく。




レ「メィルは何を聞いたんだ?」


メ「昨日はラヴィ様とワルキューレ様が一緒に行動していたみたい。私はその間フロントに居たんだけど、リリスちゃんが転送されてきたの。そのリリスちゃんが、魔王・・魔王・・ってうなされてた。」




リリスはメィルと一緒で見習い女神らしい。リリスに話を聞く前に、ラヴィ様とワルキューレが戻ってきたので、詳しい話は聞いていないが、今日のカジノ中止を伝えられたらしい。その状況を推測すると、何か事件があったのだろうという事だった。




レ「そうすると、今日は完全にやることが無いな。」




まあ、昨日の事もあるからどっちにしろ戦闘は無い方がいい。ケルベロちゃんに映画でも取り寄せてもらって暇を潰すか?と思っていたら、弥生が提案してきた。




ヤ「メィルちゃんって他の世界にも転移出来るんですか?」


メ「出来るけど・・・どこか行きたいところがあるの?」


ヤ「アヌビスちゃんの星に行ってみませんか?」




アヌビスの星か・・・そういえば、アヌビスはこっちに来たのは侵略の仕返しであって、向こうの世界に帰るつもりだったんだよな。




ア「それじゃ! 我の星に里帰りするのじゃ! 座標は我が分かるし、メィルに頼る必要も無い!」


メ「何それ! 私にも座標を教えてよ! 一緒について行くんだから!」




アヌビスがここに来てから大して時間は過ぎていないが、帰れると分かると気になるらしい。




ヤ「そうですね、メィルちゃんじゃなくてもアヌビスちゃんと一緒に行けばよかったんですね。ついつい、メィルちゃんが一緒じゃないと転移したらダメとイメージしてしまいました。」


メ「お姉ちゃんまで!? 私を仲間外れにしないで!」




メィルがワタワタと手足を動かすのが面白い。




ヤ「からかっただけですよ、一緒に行きましょう。お弁当を用意しましょうね。」




食材も無いので、弁当自体はケルベロちゃんに用意してもらうことになる。朝食のついでに注文しよう。必要そうなものは弥生のアイテムボックスに入れていく。準備が出来た為、アヌビスに転移してもらう。




ア「では行くぞ。転移!」




俺、弥生、アヌビス、イルナ、メィルの5人で惑星アヌビスへ出発だ。




転移した場所は、祭壇の様な場所だった。1段高くレンガで作られた様な地面に魔法陣が描かれている。祭壇の周りには、祭具の様な物が並べられている。




臣「アヌビス様が戻られたぞ!」




神官のように見える人物が、大声で人を呼ぶと、隣の小部屋から数人の人が出てきた。




民「お帰りなさいませ、アヌビス様!」




数人が通路にひざまずく。




ア「うむ、苦しゅうないぞ。」


臣「・・・アヌビス様、少し痩せられましたか?あと、後ろの方たちはどのような?」




神官のような人物は、明らかにアヌビスの胸を見てそう聞いたように見える。きっと巨乳好きだ。




ア「向こうの世界で色々あったのでな、のちのち話をしよう。大臣、皆を案内するのじゃ。」




神官ではなく、大臣らしい。俺達は、アヌビスを先頭に大臣の後ろをついて行く。


ひざまずいていたうちの2人が扉に向かって足早に進み、扉を左右に開けた。扉が開くと、すぐに外だった。周り中、砂漠の様で、俺達が居たのは、小さなピラミッドの様な建物だった。思っていた通り、古代エジプトに近い文明のようだ。




ヤ「そういえば、私達にも言葉が分かりますね。」




弥生が小さな声で話しかけてきた。




メ「転移者には私たちと一緒で自動翻訳されるんだよ。」




近くに居たメィルが教えてくれる。そういえば、今まで言葉が通じない人?は居なかったな。むしろ、女神や悪魔の特権だと思っていた。どこの世界にでも行かなければならない神は言葉を覚えるのも大変だなって思っていたら自動翻訳だったのか。


俺達が連れて行かれた場所は、王の居る城だった。




レ「俺達もここに入るのか?」


ア「あたりまえじゃ、我のご主人なのじゃから。」




アヌビスのその言葉に、大臣はギョッとしたようにこちらを見た。アヌビスは、何でもないと手を振るが、自分の世界の神がご主人って呼ぶと明らかにご主人も神だと思われるだろ。


大臣に連れられて玉座に着くと、王がアヌビスにひざまずく。




フ「アヌビス様、ご帰還お慶び申し上げます。」




そして、俺達の方に向かって立ち上がると、挨拶をした。




フ「余はファラオだ。よろしく頼む。」


レ「私は、零と言います。」


ヤ「わ、私は弥生と言います。」


イ「・・・イルナ、です。」


メ「メィルだよ!」




ファラオは俺達がアヌビスの付き人か何かだと思ったようだ。ここって本当に過去の地球とかじゃないよな? ファラオってよく付けられる名前なのか?




フ「アヌビス様、お疲れでしょう? すぐに部屋を整えさせます。」




ファラオはそう言って大臣を見ると、すぐに大臣は側人に部屋を用意させる。




フ「お付きの方々、ようこそいらっしゃいました。」


ア「むっ?零達はお付きの物じゃないのじゃ。」


フ「と、おっしゃられますと?」


ア「零は我のご主人様じゃ。」


フ「なんですとー!?」




ファラオはそう言うと、倒れた。が、メィルが即座に蘇生させた。




メ「大丈夫?」


フ「あなたは?」




ファラオは羽の生えて空を飛ぶ珍妙な生物を見てびっくりしている。




メ「私は、見習い女神だよ!」




メィルは、立場を聞かれたと思ったので、そう答えたみたいだ。




フ「女神様でしたか、それでは、こちらの方々も・・?」


レ「いや、私は人間です。」


ヤ「私もです。」


イ「・・・私は人間です?」




イルナだけ微妙は回答だが、異世界人も人間でいいと思う。それを聞いてファラオはホッとした表情になった。




フ「それならば、食事でもどうかな?すぐに用意させる。」




そう言うや否や、側人が準備をしに行った。


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