第47話 死亡

メ「とりあえず、ワクチンを頂いてよろしいでしょうか?」





メィルは空気を読まず、ワルキューレからワクチンをもらって飲んだ。そうとうまずいのか、おえーっと舌を出している。舌まで緑になっているな。





ワ「では零殿、何か言い残すことはあるか?」


ヤ「ちょっと待ってください!本当に源さんを治す手段はないんですか?!」





弥生は目に涙を浮かべて訴えている。今までみたいにコアになってからの蘇生が使えないんじゃ、どうしようもない。それ以外で何かないものかと考える。





レ「そうだ、俺自身の分身を作ればいい!」


ワ「無理だ。零殿が今、分身体を作ったとしても、その分身体も感染しているだろう。」


ヤ「そんな・・。ここでお別れなんて・・。」





弥生はポロポロと涙をこぼすと、嗚咽おえつをもらしている。





ワ「せめて、恐怖を感じない様に一瞬で葬ってやろう。」





ワルキューレが槍を構え、突きの態勢を取る。俺は目をつぶると、今までの事を走馬灯のように思い出していた。その中で、一瞬ユウの姿が浮かぶ。あれ?ユウなら復元できるんじゃね?





レ「ちょっと待ってくれ!」





俺がそう叫び目を開けると、目の前に槍の先があった。超ぎりぎりですわ。





ワ「なんだ?言い残す事ができたのか?」


レ「そうじゃなくて、メィル、前に俺の分身体のユウを持っていったのを覚えているか?」


メ「現在、私の側仕えとして働いてもらっているよ!」


レ「何をさせているんだ、お前は。」


ヤ「えーっ、メィルちゃんずるい!私にも貸してください!」


ワ「話を脱線させるな。それで、その分身体がどうかしたのか?」


レ「ユウは、分身体の中でも特別で、俺の知識を全て与えてあるんだ。つまり、ユウを基に俺を復元する!」





成功するかどうかは分からないが、何もしないよりはマシだ。





メ「じゃあ、ユウを連れてくるね!」





メィルは転移すると、すぐにユウを連れてきた。以前のままのユウは、きちんと装備をしていた。





レ「手順はこうだ。ユウのコアを基に俺を復元した後、元のコアを砕いて経験をすべて新しい俺に渡す。スキルはメィルに移してもらう。コアを砕いたときに感染する可能性はあるが。」


ワ「では、感染した場合はすぐにワクチンを飲むように。」





ワルキューレは俺にワクチンの入った試験管を渡してくれた。俺はユウを見る。





レ「悪いな、ユウ。また作ってやるからな。ワルキューレ、すまないがユウを1撃で倒してくれないか?」





ダメージによる痛みは無いはずだが、何度も攻撃する気にはならない。弥生もメィルもユウには攻撃したく無さそうだし。ワルキューレは槍をアイテムボックスにしまうと、手刀でユウを叩いた。ユウに5880ダメージ。





俺はコアになったユウを拾い、俺と全く同じ姿の分身体に復元した。当然裸だったが、弥生は何も言わずに顔を赤くして目を背けるだけで、メィルは相変わらず手で顔を覆って隙間から見ていた。ワルキューレとアヌビスは無反応だ。





レ「じゃあ、メィル、あとは頼んだ。ワルキューレ、やってくれ。」





俺は元の俺からワクチンを受け取る。ワルキューレは元の俺を槍では無く、手刀で倒した。零に5840ダメージ。元の俺は紫色に変色したコアになった。





ア「ところで、我はどうなるのじゃ?」





アヌビスは以前にケルベロちゃんから言われたことが気になるようだ。





ワ「このままこのコアを破壊すれば、アヌビスは一旦コアに戻ることになるだろうな。スキル使用者はコアになった方の零殿だからな。」


ヤ「えっ、目をそらしていますけど、大丈夫ですよね?」


ワ「やったことは無いからな・・。メィル、まずはこのコアからスキルを吸い出してくれ。」


メ「分かりました、はい、分裂スキルを取り出しました。そして、こっちのお兄ちゃんに移しますね。」





俺は散らばっている自分の服を着なおして、メィルからスキルをもらう。なんか変な感じだな。クローンみたいなものか?俺が紫色に変色したコアを砕くと、思っていた通り感染したのでワクチンを飲んだ。うげっ、まずすぎる。食ったことは無いが、腐った魚をミキサーですりつぶして飲んだ感じだ。腹壊さないよな?





コアが砕かれると、アヌビスもコアに戻った。俺は吐き気を堪こらえながらそれを前よりも多めのMPで復元してやる。





アヌビス(分裂体):HP3571、MP3250、攻撃力107、防御力357、素早さ558、魔力857、スキル:闇魔法(5)、魔法耐性(中)、飛行、装備:神杖・魔力250、聖なる衣・防御力250





復元したアヌビスは、8歳くらいの姿になり、ステータスも元の14分の1と、少し強くなっていた。また、闇魔法も1あがり、飛行スキルが戻ったのと、武器、防具の性能が少し良くなっていた。





ア「久しぶりに飛べるのじゃ~」





アヌビスは嬉しそうに飛び回っている。





レ「それじゃあ、ユウも作り直すか。弥生、後ろを向いていてくれ。」


ヤ「今更ですか!そのセリフは、最初から言ってください!」





弥生はむくれて後ろを向く。俺はユウの元々の装備を集めると、ユウを作り出した。





ユウ(分裂体):HP500、MP0、攻撃力100、防御力50、素早さ70、魔力0。装備:スラ剣・攻撃力30、スラ鎧上下・防御力20、スラ小手・防御力10、スラ靴・防御力10、スラ兜・防御力10、スラマント・防御力10、スラ鞘・防御力10





メ「わーい、イケメンゲットです!」





メィルはユウが装備を付けるのと同時に転移でさらっていった。





ヤ「あーっ!メィルちゃんずるい!源さん、もう一人作って下さい!」


レ「いや、もうMP無いし、今は必要ないだろ?」


ヤ「私もイケメンの側仕えが欲しいです!」


レ「じゃあ、また今度な。」





俺は守る気のない約束をして一旦帰ることにした。ワルキューレは、もう感染する事はないと思うが、念のためワクチンを手に入れてくるといって魔界に転移していった。

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