第30話 コボルトと投擲

食事を終え、フロントを通るとラヴィ様が居たので、挨拶する。すると、小声で俺にしか聞こえないように話しかけてきた。




ラ「うまくこの状況を利用してくださいね?」




それだけ言うと、あっさり離れていった。俺達は3階までエレベーターで行き、隣の階段から4階へ向かった。メィルは、ワルキューレの「私がついているから大丈夫だ。」の一言であっさりと撤収していった。




転移する瞬間、「時間が出来たので乙女ゲーをクリアしよっと、グヘヘ。」とつぶやいていたが、せめて千里眼で見てろよと思った。




レ「この階層の敵は何が出るんだっけ?」


ヤ「パンフレットには4階狼って書いてあります!」




ラヴィ様にもらったパンフレットには各階のモンスターが書かれている。ただし、大雑把なため1階ゴブリン、2階スライム、3階オークと細かい種類までは分からない。では、4階狼は何が出るんだろうか?




ヤ「ハウンドドックやヘルハウンドなんかですかね?」


レ「それは犬じゃね?」


ワ「狼系のモンスターと言えばデーモンウルフやフェンリルだろう。」


レ「万が一フェンリルが出てきたら助けて下さいね・・?」




俺達は予想しながらしばらく進むと、第一モンスターを発見した。




ワ「あれは、コボルトだな。」


レ「よかったな、弥生、犬系も出るみたいだぞ。」




コボルト(獣):HP400、MP200、攻撃力60、防御力40、素早さ60、魔力0、スキル:なし


装備:ナイフ・攻撃力20、皮の鎧・防御力10




見た目は子犬を2足歩行させたようなかわいい外見だ。柴犬か?




レ「やはり能力が高いな!当然ハイオークより強いか。」




俺達は3階でほとんど経験を得ていないため、俺が1対1で戦ってもコボルトに勝てそうにない。




ヤ「私に任せてください!えいっ!」




弥生は腕輪を鞭状にしてコボルトの首を締めあげて持ち上げると、左手の指輪を針状にして鎧の隙間から刺す。ちなみに、防御力自体は変わらないが気分の問題だろう。コボルトに20ダメージ。




コボルトは首に巻き付いた鞭をナイフで切ると、襲い掛かってきた。弥生はナイフをかわすと、左手の指輪を鞭状にして足首に巻いて転ばせると、クナイを首に刺した。クリティカル発生、コボルトに124ダメージ。弥生、いつの間に戦闘もできる子になったんだ?そういえば、スライムを狩りまくってたなぁ・・。俺も頑張らないとだめだな。




レ「ワルキューレ、すまないが、武器を貸してもらえないか?」


ワ「貸してもいいが、神槍は女神のランクによって強さが解放されるから、お前が装備しても攻撃力100くらいにしかならないぞ?」


レ「それで充分です!食らえ!」




俺のスラタンに比べれば3倍ほど強い。弥生の攻撃によってまだ倒れているコボルトの背中を刺した。コボルトに95ダメージ。やっとHPを半分以下に減らせたか。コボルトは起き上がって距離を取ると、俺の方に向かってきた。




俺は槍を突き出すが、あっさりかわされてナイフの一撃を腕に貰う。零に20ダメージ。俺は防御力が高いからな!クリティカルを食らったら危ないけど、十分に注意すれば大丈夫だろう。




ヤ「源さん!援護します!」




弥生は手裏剣を投げるとコボルトの左手に当たった。貫通、コボルトに45ダメージ。貫通属性のついた手裏剣は、相手の防具分の補正を無視しダメージを与えることが出来るほか、防具をつけていない相手の体を貫通させることもできる。弥生はこれでスライムのコアを攻撃し、狩りまくったのだろう。




レ「あと少しだ、それ!」




俺は槍をコボルトの体に向かって突き出すが、ぎりぎりでかわされてしまった。近すぎると槍が逆に当てにくい・・。コボルトは尻もちをついてしまっていたので、弥生がさらに投げた手裏剣を回避することが出来なかった。コボルトの首に手裏剣が当たる。クリティカル発生、貫通、コボルトに133ダメージ。




レ「ふぅ、やっと倒せたか。」




俺は借りていた槍をワルキューレに返すと、弥生と今度の相談をする。




レ「敵一体に対してこれだけ苦戦するなら、下の階でステータスを上げてくるか?」


ヤ「そうですね、でしたら2階と3階に別れましょう!私はまだ恨みが残っているので・・ふふっ。」


ワ「それがいい、だったらお前にはこの槍をそのまま貸してやろう。」




俺はワルキューレから神槍を受け取ると、2階へ向かった。さすがに2階は今となったら雑魚だな。今はずるしてないはずだから、ミスリルスライムも出ないはず。神槍の使用はずるでは?とメィルの声が聞こえた気がするが、ワルキューレがいいというのだからいいのだ。




ワ「効率よく狩る為に、私がモンスターを集めてきてやろう。」




ワルキューレはそう言うと、闇魔法を唱え、影の牢獄を10個ほど作った。ワルキューレは一瞬で移動すると、あっという間にモンスターを集めてきてくれた。牢獄がパンパンだ、数百体ほどいるんじゃないか?スライム同士がくっついてでっかくならないよな?




ワルキューレは俺に光魔法の魔法障壁を張ってくれた。ワルキューレは影の牢獄からスライムを取り出すと、俺に向かって軽く投げてきた。俺はそれをバットの様に神槍を振って倒す。あれ?バッティングの練習かこれ!?




ヒュージスライム以外を投げ終えたワルキューレは、俺の元へ来ると、あれで最後だと送り出した。俺は無言でうなづくと、ヒュージスライムに槍を刺した。HPが多く1発で倒せないので、何回か刺した。




そろそろ夕飯の時間だから弥生を呼びに行こうとしたら、丁度エレベーターから弥生が現れた。




レ「お疲れさん、ずいぶん早いな?」


ヤ「投擲術のレベルが上がったので、一気に楽になりました!」




形無弥生:HP472、MP305、攻撃力80、防御力40、素早さ77+38.5、魔力40、スキル:変化、投擲術(6)、空間魔法(2)


投擲術のレベルが上がり、投擲ダメージ1.6倍、素早さ1.5倍、飛距離1.4倍、クリティカルダメージ1.3倍加算、貫通属性、投擲武器操作となったようだ。




投擲武器操作は、投げた武器の飛距離以内なら自由に曲げて攻撃できるらしく、手裏剣を同時に投げて一瞬で倒したらしい。




ヤ「いけ!フィンファン〇ル!って感じです!」




そうか、弥生はニュータイプだったのか・・。あとは、コボルトを相手にするには攻撃力が欲しいから、増えたMPでさらに装備を強化することにしよう。ちなみに俺は倒したのがスライムだったからか、弥生ほどステータスは上がっていない。




源零:HP303、MP225、攻撃力55、防御力60、素早さ60、魔力21、スキル:分裂




今回は素早い相手の対応に防御力と素早さを上げた。


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