第26話 ドッペルスライムとフルダイブVRゲーム
ヤ「源さぁん?これはどういうことですかぁ?」
弥生は、ドッペルスライムのコアを踏み砕くと、指輪を鞭の様に変化させて俺の首を絞めてきた。
痛みは無いけど、動けない。あれ?俺、今は毒でHP1じゃね?
メ「きゃぁ、裸のお兄ちゃん死んじゃった!」
メィルはいつから見ていたのかしらないが、顔を両手で隠して指の隙間からチラッと見ている。いやお前どっちにしろ、千里眼で顔隠しても見ようと思えば見えるだろ!
レ「メ、メィルどういうことだ?ドッペルスライムが俺に変化したらしいぞ!」
メ「あたりまえだよ!お兄ちゃん!ドッペルスライムは最後に触れた対象に変化するんだから。ダンジョンで会ったのは、初日に形無しさんに踏まれたドッペルスライムで、再現後に触れたのはお風呂に入っているお兄ちゃんだから☆」
メィルは楽しそうにそう教えてくれると、無駄にポーズを決めた。よくあるピースサインを横にして右目にあてるやつ。
ヤ「そういえば、ダンジョンで最初に倒したドッペルスライムはコアを破壊も回収もしてなかったですね。そもそも踏んだことすら気づいていませんでしたけど。」
レ「そろそろ、首の拘束を解いてくれないか・・?実はダンジョンで毒を受けていて、何かダメージがあったら死んでしまう。」
ヤ「ご、ごめんなさい!わざとじゃないことは分かりました。もう、でも、びっくりしちゃって。」
メ「私はお兄ちゃんの体も見飽きてきたかなー?」
レ「おぃ、それは問題発言だぞ、覗のぞき女神!」
ヤ「ところで、ダンジョンに行っていたんですか?」
メ「そうだ!お兄ちゃんがドッペルスライムと戦った話をしてあげようか?」
レ「いや、大した戦闘もしていないし、弥生もまだ眠いだろ?もう少し休んだらどうだ?」
メ「えっとねぇ、お兄ちゃんがキス・・。」
レ「やめろ!気にするな弥生、何でもない!」
俺はメィルの口をふさぐと、頭に拳骨を落とす。メィルに0ダメージ。
ヤ「え?キス?誰とですか?」
弥生は好奇心で目がきらきらしている。
レ「・・・。モンスターとだよ。」
メ「間違っていないけど、実は・・。」
俺は無言でメィルを蹴る。メィルに0ダメージ。
そうこうしているうちに、あっという間にお昼になったので食堂で食べることにした。
レ「今日のおすすめはオークじゃないんだな。オークであっても今日は食わないが。」
ヤ「私もオークはもういいです・・。」
メ「私はオーク肉のステーキがいいかな!」
珍しくメィルも一緒に昼を食べるようだ。オーク肉を見せるっていう嫌がらせか?
俺はさっぱりとした素麺、弥生は朝食を食べていないのでお腹は空いていたのか、山盛りの和風スパゲッティ、メィルは宣言通りオークのステーキを注文した。
レ「昼飯食い終わったらどうする?ダンジョンに行くか?」
ヤ「そうですねぇ、徹夜の成果を見せますか!」
メ「もぐもぐもぐ、ステーキおいしいです!」
メィルはステーキ5枚重ねをバクバク食っている。あの小さい体のどこに入るんだ?と思ったけど、分子分解してるんだったか。じゃあマジで単なる嫌がらせだなおい。
ヤ「問題は、幻術ですかねぇ。魔力を上げにスライムを狩りますか?」
レ「俺もそう思ってスライムのコアを集めに行ったんだけど、それだけでステータスを上げるのは時間がかかりそうだ。」
2~3日ずっとスライムを狩り続ければそれなりに上がるだろうけど、時間がかかりすぎる気がする。
メ「もぐもぐ、私もスライム狩りばっかり見てるのも暇だし、だったらイメトレしに行かない?」
レ「イメトレ?それなら寝る前にやってたりするけど、それで強くなるのか?」
メ「強くなったイメージは大事だよ!というわけで、ゲームコーナーに行こう!」
俺達はメィルに連れられてゲームコーナーに来た。遊びたいだけじゃないのか?
メ「じゃーん、これがフルダイブ型VRゲームだよ!」
カプセル型の機械にフルフェイスのヘルメット型の装置があった。某クリアするまで出られなくなるデスゲームじゃないよな?
メ「無双系のゲームで戦闘感覚を養おうよ!」
メィルは無理やり俺達をゲーム機に座らせると、ゲームを開始した。
ゲームに入るにあたっていろいろと設定しなければならない。身長や見た目は結構いじれるみたいだ。まあ、俺は面倒だからデフォルトでいいや。設定を終了して空中に浮かぶスタートのボタンを押す。すると、光のゲートが現れた。ゲートを潜ると、荒廃した都市だった。
レ「へぇ、滅亡都市って感じか?」
ヤ「リアルですねぇ。体も思った通りに動きます!」
見た目は、俺は自衛隊の隊員Aと言う感じの格好で、弥生は迷彩服にゴーグル、茶色のブーツ、腰の左右にサブマシンガンを1丁ずつ下げ、腰のポーチに銃弾、腰の後ろに手榴弾を2個つけている。そして、メィルの見た目はと言うと・・。
メ「私は虐殺天使メィル様です!」
メィルはヴァルキリープロファイルに出てくる主人公の格好をしていた。青を基調とした鎧に、いつもよりでかい羽、身長も170cmくらいになっていて、スタイルも良くなっている。いじりすぎて体の感覚ずれるんじゃないか?
そうこうしているうちに、ゲームが始まったのか、瓦礫の間、廃墟のビルの扉、破壊された車の後ろなどからゾンビが近寄ってきた。
レ「バイオハザード系じゃねーか!?確かに、ゾンビには無双するけど思ってたのと違う!」
俺は戦国系だと思っていたが、デフォルトが自衛隊服な時点で防衛ゲーム系か・・。
ヤ「突っ込みいれている間に近づいてきてますよ!」
半分腐ったようなゾンビやら、ドーベルマンのゾンビ犬、北斗の〇に出てくるような巨大な肥満体ゾンビ等、バリエーションは豊かだ。
弥生はサブマシンガン(スコーピオン)を構えると、ゾンビに向かって突撃した。スライディングでゾンビの横を抜けると、先頭のゾンビの後頭部に一発、次のデブっちょいゾンビには足払いで態勢を崩した後にゾンビの袖を引っ張り倒した後、顔面に連射、攻撃してきた女ゾンビの大振りのひっかきをバク宙して回避したあと2丁とも前に構えると連射し、打ち尽くしたサブマシンガンにポーチから弾を補充していた。ドーベルマンの噛みつきを左のサブマシンガンで受けると、右手のサブマシンガンで頭部を撃ち抜く。
レ「すげぇ、まるでアクション映画を見ているようだ。」
弥生は側宙、前宙を駆使し、どんどん敵を倒して行く。ゾンビの攻撃を銃で受け、相手の膝を左足で蹴飛ばし、銃で殴りつけるなど近接もいけるようだ。
メ「よーし、私も負けないよ!」
メィルは翼で空中に浮かぶ。
メ「必殺!ニーヴェルン・・。」
レ「それはダメだろ!」
メ「仕方ないなぁ、お兄ちゃんは。じゃあ、ウィング・レイン!」
メィルは羽を銃弾のように飛ばしてゾンビを撃退していった。こっちのほうが無双系ゲームみたいだ。ちなみに俺は普通に中距離で車の影からAK47でタップ撃ちしていた。集まってきたやつは普通に手榴弾で対応した。ステージが進むにつれてゾンビの動きが良くなっていく。ゾンビというよりアンドロイドじゃないか?というキャラまで出てきた。メィルはいつの間にか持ち出した弓で眉間を貫き、弥生はアクロバティックな動きで倒し、俺は普通にタップ撃ちしていた。
メ「ボスが来たよ!」
ボスはガシャドクロみたいな巨大な骸骨だった。え?ここでホラー?
レ「くっ、骨の隙間が多すぎて当たらん!」
ヤ「一番当てやすい頭蓋骨を狙います!」
メ「それだと、手でガードされるから、足場から崩すよ!」
俺達は連携して、弥生が足元を手榴弾で崩し、メィルが槍で手のガードを崩し、俺がタップ撃ちで骸骨の眉間を撃ち抜いた。骸骨が倒れると、you winと出て現実世界に戻された。
ヤ「ふぅ、すっきりしました!」
メ「楽しかったね!」
レ「いや、イメトレっていうか普通に遊んだだけじゃね?」
こうして4日目はほぼ何もしないまま過ぎていったのであった。
俺達はビジネスホテルに戻ると、ケルベロちゃんにゲーム機とテレビを取り寄せてもらい、一緒に遊んだ。懐かしのストリートファイターⅡとボンバーマンだ。晩飯は、俺は軽く焼き鳥とビールを飲み、弥生はグラタンとシフォンケーキを食べ、夜が更けたころに弥生たちと別れて寝た。
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