第25話 ダンジョン攻略4日目

朝が来た、俺はいつも通り歯磨き、トイレ、髭剃りを終え、ナンプレをしていると、いつもより少し遅く扉をノックする音が聞こえた。





ヤ「おはようございます!源さん!」


レ「おはよう、弥生。それどうしたんだ?」





扉を開けると、目の下にクマを作った弥生がいた。そして、なんか全身トゲトゲだった。





ヤ「徹夜で色々と試していました!これがその成果です!」





弥生はそう言うと、トゲの一つがグニグニと動いた。





ヤ「全身に分裂体をつけ、用途に合わせて変化させます!」





どうやら、空間魔法に入れるといざというときに使えないから、常に分裂体に触れるよう腕輪やら足輪っていうのか、やら沢山付けている。





レ「とりあえず、飯食うか。」





俺は徹夜でハイになっている弥生を落ち着かせようと、部屋の中に居れ、冷蔵庫からお茶を取り出して飲ませた。一息ついて落ち着いたのか、うつらうつらとしはじめた弥生を102号室に連れていき、お昼ごろ呼びに来ると伝えて、部屋に戻った。俺は徹夜で頑張った弥生を見て俺も頑張るかと思い、ケルベロちゃんにトーストと牛乳パックを注文すると、食いながらダンジョンに向かった。





メ「今日はやけに早いね!お兄ちゃん!」





ダンジョンに行くと、メィルがいた。時計を見ると、まだ7時過ぎだった。ラヴィ様の出勤は8時からだから、メィルが代わりに居るんだろう。





レ「ああ、弥生が頑張っているみたいでな、俺も何かできないかと思って。一人でダンジョンに行ってくるわ。」


メ「そうなんだ!気を付けてね?一人でダンジョンに行くと、対処できない場合があるから!」


レ「大丈夫だよ、2階にしか行かないし。ちょっとコア集めるだけだからさ。」


メ「じゃあ、私はここにラヴィ様が来るまでは居るからね!行ってらっしゃい!」





メィルに見送られ、俺は2階でスライム狩りをすることにした。





レ「さて、俺もたまには新しいことをやってみるか。」





俺は遭遇したファイアスライムに向かって潰すイメージをした分裂体を作り出し、ファイアスライムを食わせた。ケルベロスを作り、犬ゾリならぬケルベロスゾリで機動力を上げると、さくさくとスライムを狩っていった。非常階段の方につくと、見慣れた背中が見える。





レ「あれ?弥生?もう起きたのか?」





それは弥生だった。朝の装備とは違い、最初のころに着ていた忍者服を着ている。弥生は聞こえなかったのか、そのまま奥の方へ進んでいく。俺はケルベロス達を弥生に向かって走らせて追いつくと、改めて声をかけた。





レ「弥生、もう大丈夫か?」





俺は弥生に声をかけると、弥生は振り返った。弥生は、俺の方を向くと、俺の肩に手を回して・・・、キスをしてきた。





レ「んっ!ぐっ!」





俺は混乱して弥生にされるがままになっていると、口の中に異物が入ってきた。俺はその異物をゴクリと飲み込んでしまった。状態異常:毒





レ「ぷはっ、お前、弥生じゃないな!」





俺は口を右手で拭うと、弥生の偽物から離れた。異物を吐き出そうとしたがもう遅かったようだ。俺は口に指を突っ込んで吐き出そうとしたり、逆立ちしてみたりした。零に10ダメージ。零に10ダメージ。徐々にHPが減っていく。弥生の偽物は何もせず、俺の様子を見ているようだ。毒で死ぬのを待っているのか?この階に来た時なら兎も角、今の俺ならまだ大丈夫だ。





レ「偽物・・だよな?操られてるとかじゃないよな?」





俺はどう見ても弥生にしか見えない上に、毒を飲ませた以外に何もしてこない相手にどうすればいいか判断がつかなかった。零に10ダメージ。





メ「8時になったからもう帰るね、お兄ちゃん。あっ、あれがドッペルスライムだよ!」





交代をわざわざ知らせに来てくれたのか、一瞬で偽弥生の正体を看破してくれた。いつも唐突に現れるメィルだが、今は助かった。





レ「じゃあ、偽物とわかったところで倒すか。」





偽物だと分かったけど、見た目が弥生なので、左手に攻撃する。ドッペルスライムに74ダメージ。俺はドッペルスライムのコアを拾うと、メィルに聞いた。零に10ダメージ。





レ「ところで、毒っていつ治るんだ?1分毎に10ダメージ受けるんだけど。」





このままだと20分もしないうちに死んでしまう。





メ「大体1時間くらいかな?大丈夫!毒じゃHP1以下にはならないから!」


レ「1時間って・・、HP600も減るのかこの毒。」


メ「普通はそんな強くないよ?皮膚に触れても1ダメージしか受けないし?もしかして飲んじゃった?」


レ「ああ、口移しされた。このままだとHP1になってしまうから一旦帰るか。」


メ「へ~、口移しされたんだー?形無しさんの見た目だから?」





メィルがニマニマとしながら言ってくる。俺だってまさかこうなるとは予想もしてなかったよ!俺はケルベロスゾリでエレベーターまで戻る。用が無くなって待機しているケルベロスを見て、メィルはこれもう要らないよね?とケルベロスを蹴り倒して行った。ケルベロスに290ダメージ。ストレスでも溜まっているのか?





俺は部屋に帰り風呂に入りながら、ドッペルスライムのコアを見ていた。





レ「このコアを使って分裂体を作れば、弥生の偽物が作れるのか・・。」





俺が少し名残惜しい気がして、ドッペルスライムを再現してみた。再現されたドッペルスライムは普通のスライムと見た目が変わらないものだった。





レ「あー、やっぱり再現した物じゃだめか。これじゃただのスライムだ。」





俺は風呂場からスライムを追い出すと、湯船に漬かりなおした。すると、ドアをノックする音がする。





ヤ「すいません!源さん。すっかり寝てしまったようです!入ってもいいですか?」


レ「ああ、鍵は開いてるから入っててくれ。俺は今、風呂に入ってるから。すぐ上がって着替えるよ。」


ヤ「分かりました!では、部屋の中で待たせてもらいますね!」





ガチャリと扉が開く音がして、「おじゃましまーす。」と言う声がした。俺は脱衣所で着替えていて、ふとドッペルスライムが居ないことに気づいた。





レ「弥生!スライムが居るかもしれないけど、それはドッペルスライムを再現した物で攻撃はしてこないからな。」





俺はスライムと間違えて倒されないよう、弥生に声をかけた。





ヤ「あ、このスライムですね?あれ?なんか変化していくんですが・・?」


レ「ああ、もともとダンジョンで弥生の姿で出てきたやつだったんだ。」





俺は着替え終わり、弥生の待つ奥へと向かうと、無言で向かい合う弥生と、全裸の俺が居た。





ヤ「きゃぁぁぁぁ!きゃぁ!きゃぁ!」





弥生はもう叫ぶしかしていない。弥生は横を向いて指をドッペルスライムに向けると、一瞬で針の様になった指輪で貫いた。クリティカル発生。ドッペルスライムに94ダメージ。下半身を貫かれたドッペルスライムは、コアになった。


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