第19話 ミスリルスライムと装備外しの罠

ユウは弥生の前に盾となって構え、涙目の弥生の目線の先には、虹色に輝くスライムが居た。弥生にステータスを聞くと




ミスリルスライム(鉱物):HP1000、MP500、攻撃力20、防御力530、素早さ100、魔力300、スキル:物理カット(99%)、魔法カット(99%)、飛行




えぇ、倒すの無理じゃね?メィル並みの強さじゃん。


ミスリルスライムは素早く動くと、俺の背後から体当たりをしてきた。早すぎて対応できない。クリティカル発生、零に20ダメージ。頭上から体当たり。クリティカル発生、零に20ダメージ。正面から体当たり。クリティカル発生、零に20ダメージ。


大して攻撃力はないけど、不意打ち扱いで全部クリティカル発生になってる!




レ「くっ、俺ばっかり狙いやがって!」




HPも100切ってあせった俺はとりあえずスラタンを振り回したが、ミスリルスライムはあっさりとかわして当たる気がしない。




ヤ「私も、えい!」


ユ「ふっ!はっ!」




弥生とユウもスライムに攻撃したが、同様にかわされる。復元したスライム達も魔法で援護攻撃しているが、ダメージは0だ。逆にミスリルスライムの攻撃は相変わらずで、クリティカル発生、零に20ダメージ。クリティカル発生、零に20ダメージ。




ぼこぼこにやられた俺はいつの間にか死んでいた。




メ「死んでしまうとは情けない!ほれっ!」




目を覚ますと、メィルが偉そうな白髭をつけて豪華な椅子に座っていた。




レ「・・・。あれからどうなったんだ?」




俺はメィルを無視し、服をさっと着ると弥生にどうなったか聞いた。さすがに3回目ともなれば慣れた。




ヤ「ミスリルスライムは、源さんを倒したあと、あっさりと逃げていきました!さあ、お昼を食べに行きましょう!」


レ「いや、もう少し詳しい話を!あと、俺が死んだのに結構あっさりしてるな!」


ヤ「もう3回目ですし、慣れもしますよぅ。」




やっぱり、慣れって怖いな。そのうち、嫌な顔をして「あ、死んだんですか?」とか、「またですか、もう知りません!」とかになったら困る・・。




メ「バチが当たったんですよ!源さんがずるしようとするから!」




メィルいわく、ダンジョンの中はきちんと管理されている空間なので、チート行為や悪質なプレイをしたらバチが当たるらしい。いや、ゲームかよ!ちなみに、ミスリルスライムはメィルでもなかなか倒せないらしい。クリティカルでも99%カットされるのですべてクリティカルでも時間がかかるとか。




レ「あと、ユウは?」


メ「没収です、帰ってから私がペロペロします!イケメンばんざい!」


レ「それはお前が欲しいだけだろ!返せ!」


メ「いやでーす。かえしませーん。」




メィルはアッカンベーと舌をだすと、転移していった。




ヤ「うぅ、私の王子様が・・。」


レ「唯一の戦闘職が・・。」




俺達はがっくりしながら食堂に向かった。ちなみに、スライム達は移動速度が遅いため、倒してコアに戻したとの事。食堂で弥生は豚の生姜焼き定食、俺はチキン南蛮を注文すると、これからについて話し合った。




レ「実際どうする?これからの攻略は。」


ヤ「装備を充実させて、地道にスライムを狩りますか?一応私たちもスライムは倒せる強さですし。」


レ「それでもいいけど、制限時間がなぁ。」




まだ3日目で予定よりは早いとはいえ、武術的に俺達が強くなるには30日という期間は短すぎる。ステータス的に強くなっていくしかないか。まあ、いくら時間が無くても残業(夜間のダンジョン攻略)はしないけどな!そうこうしているうちに料理が出来たので、おいしくいただき、食堂を後にした。


昼からは再び2階に行った。




ヤ「そういえば、なんで帰還の巻物を使わなかったんですか?」


レ「あー、そういえばそんなアイテムもあったな。カバンに入れっぱなしで忘れてた。今度からはすぐに使えるようにしておこうか。」




俺は弥生の指摘でアイテムの存在を思い出し、カバンから取り出してポケットに入れた。ん?覚えてたんなら弥生が使えば良かったんだろうが、弥生も忘れてて今思い出したんだろうな・・。


ついでに言うと、回復剤の存在も忘れていた。本当に持ってる意味なかったな。




2階を探索し、ずるじゃ無い程度にケルベロスを作成して援護させたりして、スライム達を倒しながら探索していると、弥生が壁の一部を指さした。




ヤ「あそこの壁、鑑定眼鏡で見てみると、隠し通路って表示されます!」


レ「たしかに、少し色が違うか?スライムの這った跡だと言われても分からないくらいだが。」




鑑定眼鏡様様だな。俺はゆっくりと色の違う壁を押すと、回転扉の様にくるりと向こう側に行けた。隠し通路と言うか、廊下というか、道を進むと、行き止まりに宝箱が3つ置いてあった。




ヤ「ダンジョンで初めての宝箱ですね!何が入っているかワクワクします!」




ちなみに、左から茶色、金色、銀色だ。




ヤ「ふむふむ、左が銅の宝箱、右が銀の宝箱、真ん中が金の宝箱だそうです!」




うん、見た目で大体わかるけどな?ゲームだと、銅、銀、金の順で中身が良くなるよな。




レ「とりあえず金の宝箱を開けてみるか。」


ヤ「源さんは、好きなものは最初に食べる派ですか?」


レ「どっちかといえばそうだけど、なんで?」


ヤ「普通、がっかりしそうな銅から開けて、金で喜ぶってパターンを選びそうな気がするんですけど。」


レ「俺の普通は金からなんだよ。っと、あれ?開かないな。」




俺はがちゃがちゃとやるが鍵がかかっているようだ。




レ「鍵がかかっているな。仕方ない、後回しにして銀を開けるぞ。」




俺が銀の宝箱を開けると、濃い紫色の煙が出てきた。




レ「うわっ、罠か!大丈夫か?弥生。」




俺はとっさに弥生をかばったが、煙の量が多く、通路一帯に広がった。




ヤ「けほっ、けほっ、煙たいけど毒とか麻痺とかの状態異常は無いようです・・。」




見た目は毒の煙っぽいけど実害は無いようだ。しばらくして、煙が晴れてきた。




レ「や、弥生・・!」


ヤ「み、源さん?」




俺達は恐る恐る目を開けると、大変な事が起きていた。なんと、全ての装備が外れて床に散らばっていたのだ。こんな無防備な状態で敵に襲われたら大変だ!うん、大変だ・・。だから、背後から俺の首にクナイを当てないでくれ・・。




レ「わ、わざとでは無いんだ・・。ごめんなさい。」


ヤ「ええ、分かっていますよ?分かっていても許せることと許せないことがあるだけです。」




俺はせめて弥生の方を見ないように目をつぶって床に伏せた。全裸のおっさんが床に伏せるって結構痛い絵面だな・・。




ヤ「服を急いで着るので、絶対に見ないで下さいよ?あれ?パンツが見当たりません!」




弥生は、しばらく辺りをごそごそと調べていたが、一か所だけ調べていないところがあることに気づいた。




ヤ「源さん?ちょっとそこを避けてくれませんか?」




俺は少し起き上がって、薄っすらと目を開けて、床を確認すると、ピンクのかわいらしいパンツを下敷きにしていた。俺は無言で1mほど左にずれて、土下座の格好をした。




ヤ「怒ってはいませんよ?たとえ罠の可能性を考えず、あっさり宝箱を開けた事も、私の下着を隠していた事も。」


レ「罠はごめん!でも、下着はわざとじゃない!目をつぶって伏せたらたまたまあったみたいだ!」


ヤ「へぇ?本当ですか?」


レ「本当だ!それにしてもかわいい下着だな!うん、弥生はセンスが良いな!」


ヤ「・・・。」




弥生は無言で下着を拾って履き、服を着て装備を整えると、廊下を戻っていった。




ヤ「着替え終わったら待っていてもらえますか?少し、頭を冷やしてきますので。」




俺は、着替え終わってから1時間ほど正座をして待っていると、弥生が戻ってきた。




ヤ「おまたせしました、源さん!これが戦果です!」




見た目はいつもの弥生だ。そして、弥生がアイテムを入れる為に持ち歩いていた袋を逆さにすると、山の様にスライムのコアが出てきた。




ヤ「あと、勝手で悪いのですけど、少しコアを食べさせてもらいました。コアを噛み砕いているとすっきりするので。」


レ「はい・・。ご自由にどうぞ・・。」




俺はそれ以上何も言う事が出来なかった。山の様なコアを2人で分け、ステータスはこうなった。




源零:HP203、MP175、攻撃力45、防御力50、素早さ40、魔力21、スキル:分裂




形無弥生:HP272、MP205、攻撃力55、防御力28、素早さ53+21.2、魔力21、スキル:変化、投擲術(5)


投擲術のレベルが上がり、投擲ダメージ1.5倍、素早さ1.4倍、飛距離1.3倍、クリティカルダメージ1.2倍加算、貫通属性となった。


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