愛情!独力!貪利!愛憎渦巻くトレジャーハント②

「ん?」

 エレナと別れて教室に着くと、なにやら教室が騒がしい。

「おう、恋次。今日は珍しく一人なんだな」

「おはよう恋次。どうしたんだい? 元気がなさそうだけど」

 教室に入ると郷と聡が話しかけてきた。

「どちら様ですか?」

 だが俺は二人に対して知らんぷりをした。

「は? 何言ってんだお前」

 意味が分からないといった顔をしている郷。

「あぁ……」

 一方、聡の方はなんとなく察したような顔をしていた。

「俺の知り合いにこんなモテなさそうな顔をしたやつはいませんね……。人違いでは?」

 未だに不思議そうな顔をしている郷を煽る。

「あ゙? てめぇも似たようなもんだろ!」

 煽りは効果的だったようで、郷は顔に青筋を立てて怒っている。

「HAHAHA。何を言ってるんだこのブ男は? 俺には可愛い可愛いパートナーが二人もいるんだぞ? お前なんかと一緒にするんじゃあないぜ!」

 怒っている郷に対してさらに高笑いをしてやる。

「ほほぅ……。いい度胸してるじゃねぇか……! いいぜ、お前がその気なら俺も相手になってやるよ」

 そう言うと郷は大きく息を吸い始めた。

「あーっ、恋次! その女は誰だ!? 新しいパートナーかぁ!?」

 大声で変なことを言ってきた。

「は? お前何を言って──」

 突然意味不明なことを言い出した郷に声をかけようとした瞬間、何かが廊下をものすごい勢いで走る音が聞こえてきた。

「ん? なんだ?」

 音の発生源を確認しようと扉に近づいた時、その扉が音を立てて勢いよく開かれた。

「れ・ん・じぃ〜? 今聞こえてきたのは一体どういうことかしら〜?」

「……事と次第によってはこれから監禁からの取調べが行われることになります……」

 開かれた扉の先に立っていたのは二人の鬼でした。

「ひっ!?」

 突然の恐怖の来訪に思わず後ずさりをしてしまった。

「あら? 私たちから逃げるということは……なにか隠したいことがあるということでいいのかしら?」

「……それじゃあ、オ・シ・オ・キ♡しないとですね……」

 二人がジリジリとこちらに寄ってくる。

「お、俺はこんな所で力尽きるわけにはいかないんだぁー!」

 教室の窓に向かって走りだす。

(こうなったらダイナミックに脱出してこの二人を撒いてやる!)

 ここで捕まってしまったら最低で今日一日、最高で一週間がムダになってしまう。

「ちょっと考えが」

「……甘いと思います……」

 いつの間にやら二人が俺の真横に来ていた。

「なにっ!?」

 この二人とはそれなりに距離が空いていたはずなのに一瞬で距離を詰められていた。

「はぁっ!」

「……ふっ……!」

 そして火燐が俺の両手を手錠で拘束し、環さんは俺の両足を紐で縛り上げた。

「くっ……。離せ! 俺は無実だー!」

 両手両足が使えなくなり、俺はその場でグネグネと動いて無罪を主張するしか出来なくなった。

「はいはい。言い分はこっちで聞くから」

「……でも恋次さんの言い分が通るかは……五分五分……」

 おい、それ絶対お前らの気分次第だろ。

「まぁまぁ二人とも落ち着いて。恋次は嘘なんてついてないよ」

 なんとか拘束を解けないものかとモゾモゾしていると、聡が助け舟を出してくれた。

「恋次がこの教室に来た時は彼一人だったし、その時に郷と言い争いをしていたんだ。それに腹を立てた郷が仕返しに嘘を叫んだだけだよ」

 聡が二人に対して事情を説明してくれている。

(おぉ、貴方が神か……!)

 俺をこの窮地から救ってくれるかもしれない聡に後光が差して見える。

 これから一生聡に逆らうのはやめておこう。

「──そう、分かったわ」

 そう言うと火燐と環さんは俺の拘束を解いてくれた。

「非常に残念だけど、無実が決まっていたなら始末するヤツもいないし仕方ないわ」

「……うん、ものすごく残念だけど彼を凍らせる緊急性がないのなら仕方ない……」

 どれだけ残念がってるんだよ。

 てか、二人とも不穏すぎる。

 二人からの拘束を解かれた俺は郷の元へと向かいドロップキックを仕掛けた。









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