告白狂想曲⑥

「ふぅ……、なんとか逃げ出せたな」

 校庭を歩きながら、無事逃げられたことに安堵する。

「これからどうすっかな〜」

 火燐がいる教室には帰れない。

 そうなると行ける場所は上級生か下級生の教室付近になる。

(……下級生の教室に行くか!)

 上級生が怖いとかそんな理由じゃない。

 決してそんなことはない。

(このタイミングならどの学年がどこの場所に居ようとも特に不審がられることはないからな)

 今の俺には絶好の隠れ場所というわけだ。

(それにしても……)

 ぐるっと周囲を見渡すと、まさに告白大会という感じでそこかしこで告白が行われている。

 ある者は手紙で、またある者は口頭で、さらにまたある者は放送を使って大々的に告白している者もいる。

(色んな告白の仕方があるんだなぁ……)

 趣向を凝らして、少しでも相手にOKをもらおうと必死になる姿はとても輝いて見える。

(俺には無いものだから余計にそう見えるのかもな)

 考え事をしながら歩いていると目の前から見知った顔がいた。

「やぁ、恋次。お散歩かい?」

 聡が前から歩いてきた。

「よぅ、聡。……今一人か?」

 聡がここにいるということは、郷ももしかしたら近くにいるかもしれない。

 アイツがいたら即座に火燐に俺の居場所が伝わってしまうだろう。

「うん、一人だけど……。そういう恋次こそ、どうして一人でいるんだい?」

 聡が一人だということに安堵する。

「見てわかるだろ……。逃げてきたんだよ」

 聡と並んで歩きはじめる。

「あぁ、そういうことだったんだ。それにしてもよくあの小野さんから逃げられたね?」

 聡が感心した様子で話す。

「そこはほら。俺のこの頭脳で考えに考えられた作戦によってだな」

 俺が実行した作戦を話す。

「あははっ、それはすごいね。でも今日一日ぐらい我慢してもよかったんじゃない?」

 自分の頭脳を自慢するも軽くあしらわれてしまう。

「いや、別に火燐と一緒にいるのは嫌じゃないぞ? ただ、一日中首輪着けて生活してたら周りにどんな目で見られるか……」

 少なくとも、これから先学校の人に首輪趣味の変態だと認知されることになるだろう。

「今でも割と変人扱いされてるし、別によくない?」

 サラッととんでもないことを言われた気がする。

「え?」

 思わず聞き返してしまう。

「いや……。君、結構変人だよ?」

 どうやら聞き間違いではなかったようだ。

「まっ、ままままぁ人によってはそういうみみみ見方もあるよな……」

 改めてしっかりと変人呼ばわりされたせいでダメージは大きかった。

「あっはは!大丈夫だよ、恋次。君がどれだけ変な人でも僕にとっては大切な友人には変わりないよ」

 それって暗に俺は変な人って認めてない?

 友人ならその辺否定して欲しかったな。

「そう言ってくれるだけで嬉しいよ……」

 励ましを素直に受け取っておく。

「それより恋次、今まで逃げてきて疲れてるんじゃない? どこか座れる場所でも探して落ち着こうよ」

 聡の提案に賛同して、下級生の校舎付近にあるベンチで休憩することにした。

「はい、恋次」

 聡が飲み物を手渡してきた。

「おう、ありがとな」

 飲み物を受け取って開封する。

「ふぅー……。さて、これからどうすっかなー」

 一口飲んでから、一息つく。

「まぁまぁ、そう焦らないで。ここで少し話でもしようよ」

 聡がそう提案してくる。

「うーん、そうしたいのは山々なんだがな。火燐がここまで探しに来ないとも限らないし……」

 今頃血眼になって探してるだろうからな。

「……ふーん」

 なぜか隣から不機嫌そうな声が聞こえた。

「聡……?」

 聡の様子がどこかおかしい。

「……ちょうどいい機会だから聞こうと思ってたんだ」

 真剣な目でこちらを見つめてくる。

「君は小野火燐のことをどう思っているんだい?」












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