告白狂想曲④

「あ、赤井くん……!? そ、その首に着いているものは……!?」

 席に座っていると、教室へ来た先生にものすごく驚かれた。

「聞かんといてください……」

 上を向いて涙を堪える。

 あれ、頬に温かいなにかが流れてる。

「そ、そうですか……。オホン! 気を取り直して……。本日は告白大会があります。日頃から想いを秘めている人がいたら、この機会に思い切って打ち明けてみましょう」

 先生から告白大会のお知らせがされる。

 俺には関係のないことだけどな。

「恋次、今日私から離れたら……」

「分かってる。余程の緊急事態がない限り離れるつもりはないって」

 まぁ、その緊急事態は自分で作るけどな。

「それならいいけど……」

 それでもどこか不安気な火燐。

「大丈夫だって。俺が火燐を置いてどこかに行くやつだと思うか?」

 火燐の頭に手を置いて撫でながら問いかける。

「……ううん」

 火燐が控えめに首を横に振る。

「だろ? それじゃあこの首輪は外してくれるな?」

「それはダメ」

 ちくしょう。

 まぁいい、他にも首輪を外させる策はあるからな。

 その後は何事もなく先生の話は終わっていった。

「えー、それではみなさん今日もよい一日をお過ごしください 」

 先生の話が終わった瞬間、教室の扉が勢いよく開けられた。

『樹里恵! 今日こそ君に僕の迸る想いを伝えるよ!』

 いきなり男子生徒が女子生徒の名前を叫びながら入室してきた。

『露美男! ダメよ! 私たちは敵対する家系の者同士……。結ばれてはいけないのよ!』

 名前を呼ばれた女子生徒が涙を流しながら、その呼びかけに反抗する。

『そんなことは僕たちには関係ないさ! 僕たちの想いは誰にも止められない!』

 教室に入ってきて、無理やり女子生徒の手を取る。

『あっ……。露美男……』

 手を握られた女子生徒はうっとりしながら、男子生徒に身を預ける。

『樹里恵……。さぁ、行こう。僕たちの楽園へ!』

 男子生徒が明後日の方向を指さし、女子生徒を連れて教室から出ていく。

『えぇ、露美男! 私は貴方にどこまでもついていくわ!』

 そのまま二人で教室から出ていき、どこかへと去っていった。

「「…………」」

 教室を沈黙が包む。

「えー、あそこまでやれとは言いませんが、あのように自分の想いを伝えられるよう頑張りましょう」

 あそこまでやれる人なんてそうそういないだろ。

 朝からとんでもない乱入者が来たが、無事HRが終わった。

「やぁ、赤井」

 火燐から逃げる算段を考えていると、小金井が話しかけてくる。

 ちなみに小金井との関係は以前に比べ良好だ。

(昨日の敵は今日の友ってやつだな)

「どうした小金井。ちょっと考え事があるから手短に頼む」

 主に火燐から逃げ出すための作戦だが。

「あぁ、すまない。手短に話すとしよう。僕も君もパートナーがいるだろ? だから今回の告白大会はどのように参加するつもりだい?」

 なんだそのことか。

 告白大会中は、授業は行われず自由に過ごして良い。

 すでにパートナーがいる人や現在想い人がいない人、様々な理由で告白大会に参加しない人は自習をしたり各々の過ごし方をする。

「うーん、そうだな。俺も告白大会に参加してもいいんだが……」

 チラッと横にいる火燐を見る。

「ダメよ」

 首輪をジャラっと鳴らしながら、火燐に速攻で拒否される。

「これもあるわけだしな。でもまぁ、どうするかはまだ決めてないかな」

 首輪を指さしながら、苦笑いをする。

「あ、あぁ。それか……。君も災難だな」

 小金井も苦笑いをしながら、同情してくれる。

「まぁ、そのうち慣れるさ。すまんな、すぐに答えられなくて」

「大丈夫だ。なにかあった時はよろしく頼むよ」

 小金井はそれだけ言うと、パートナーの女子生徒たちと共に教室を後にした。

(さて、と……。大変な一日が始まるな)

 首輪に軽く触れながら今日が無事に終わることを祈っておく。





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