告白狂想曲②
「あっ、そうそう恋次。ちょっと恋次の好みを聞きたいんだけど、いいかな?」
カバンをゴソゴソしながらそんな事を言い出す。
「俺の好みなんか聞いてどうするんだ? ……まぁ、いいけど」
パートナーになった俺の好みに合わせてくれるのかもしれない。
なんとも素晴らしい女性ーー。
「えっとね……? 手錠と首輪どっちが好き?」
差し出されたのは、鋼鉄の輪っかと本革の輪っか。
「これは……どういう……?」
あまりにも突然の事で理解が追いつかず、脳が理解するのをやめてしまった。
「もう少しで告白大会があるでしょ? それで、恋次から目を離すと、すぐ他の女にちょっかい出されるじゃない? そうならないための道具よ」
俺には……!
その思考回路が分からない……!
「ちなみに選ばないという選択肢は「ないね」そうですか……」
一瞬で拒否されてしまう。
(考えろ……! 拒否ができないなら、せめてダメージが少ない方を選ぶんだ!)
手錠の方は、両手が塞がれてなおかつ音が鳴って目立つ。
首輪の方は、首に巻かれるだけで音は鳴らないし服の襟で隠せる。
つまり、この選択の最適解は首輪を選ぶことだ。
「それじゃあこっちにするかな!」
ジャラ。
「ジャラ?」
首輪を掴んで引っ張ると、なにやら嫌な音が聞こえた。
おそるおそる首輪を引っ張ってみると、首輪に付けられた鎖も一緒になって引っ張られてきた。
…………。
ダッ!
ガッ!
「もう! そんなに照れなくてもいいのに」
席を立って逃亡しようとしたが、一瞬で捕まってしまった。
「い、いやぁ。そんないい物、俺にはもったいないよ」
逃亡が失敗に終わったので、別の作戦を考える。
「そんなことないわ。恋次のことを想って、恋次のために買ったんだもの」
その言葉は別の物を贈られる時に言われたかった。
「で、でもほら! サイズが俺に合わないんじゃないかなーって!」
首輪を持ってきても、俺の首に入らなければ意味をなさない。
「それじゃあサイズが合わないか、試しに着けてみる?」
首輪のフックを外して、ネックレスの試着を勧感じで首輪の装着を勧めてくる。
「お手柔らかにお願いします……」
おそるおそる首を火燐の方へと近づけるめるようなわないことを。
心の底から不服だが、実際に着けてみてサイズが合証明するしかない。
「着け心地はどう?」
首輪は俺の首にジャストフィットした。
「すごく……いいです……!!」
認めたくないが、サイズはピッタリで息苦しくもない。
首の肌に当たる部分も、嫌な感触一つせず着けていることすら忘れてしまいそうになる。
「よかったー! 恋次に合うようにサイズを調整したけど、やっぱり実際に着けてもらうまで不安だったんだよね!」
俺の首にピッタリだったことが分かると、とてつもない笑顔になった。
ってちょっと待て。
「なんで俺の首のサイズを知ってるんだ?」
俺自身もそんな情報知らないし、火燐に測ってもらった覚えもない。
「この前、恋次の家にしのびーーお邪魔した時にこっそり測らせてもらったのよ」
おい、不法侵入。
今度から家だけじゃなく部屋にも鍵を付けるべきかな。
「……ちなみにそれは何時頃の話だ?」
ふと気になったので問い詰めてみる。
「三時よ」
やけに自信満々に答えてくる。
「……ante meridiemよ」
なんて?
「アン……メリ……なんだって?」
聞き取れた所を復唱してみるが、意味が分からなかった。
「そんなことより!」
言葉の意味を考えようとしていたが、火燐の声で考えを遮られてしまう。
「明日はこの首輪着けてくれる……よね?」
可愛らしく小首を傾げて問いかけてくる。
その手に鎖が握られていなければ最高のシチュエーションだったんだけどな。
「まぁ……考えておくよ」
そして、ちょうど先生がやってきたので首輪を外して今日一日が終わった。
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