荒れ狂う嫉妬の炎②

 学校に着いてから火燐と別れ自分の教室へと向かう。

 (うぅ……、嫌だ。教室に行きたくない……)

 しかしこのまま教室へ入らない訳にもいかないので、最大限影を薄くして教室へと入り込む。

 よし、なんとか気付かれずに教室に入ることができた。

 後は自分の席に座り秘技寝たフリ作戦をーー。

 「よぅ、恋次。今日は早いんだな」

 しようとした所で声をかけられた。

 ギギギとロボットのように声の主の方へと振り返る。

 「ご、郷ゥー!」

 人の不幸を他人へ広め尚かつ今人の作戦を邪魔をしてきた友人だった。

 「ん? おう。なんだーーってあぶねぇ!?」

 チィッ! 避けられたか!

 「お、おい。ちょっと待て。どうしていきなり殴りかかってくるんだ、理由を言え理由を」

 素早い動きで俺の両手を塞いでくる郷。

 さすがに体格差があって抑え込まれていては分が悪いので、

 「よくもそんな白々しい嘘をつけるな! 俺の恋戦が行われることを広めやがったな!」

 ただでさえクラス連中には知られて嫌なのにそれが他のクラスにもなんて最悪すぎるわ!

 「おいおい、俺はお前の勇姿をみんなに見てもらおうと思って広めたんだぞ? 感謝こそされど怒られる義理なんてないぞ?」

 やれやれといった感じで言葉をなげかけてくる。

 「なーんだ、そっか! それじゃあ仕方ないーーってなるかこの野郎!!」

 ノリツッコミとして腹にパンチを繰り出す。

 「はっはっはっ、甘い甘い。俺にパンチを喰らわそうなんて百年早いわ」

 しかし、高笑いをしながらパンチは軽々しく受け止められてしまった。

 「赤井恋次! 逃げずに学校に来たようだな! その根性だけは褒めてやる」

 郷と睨み合いをしていると、今の最大の悩みの種である人物の声が聞こえてきた。

 「なぁ、小金井……。今回の恋戦やめないか? こんな不毛な争いなんて誰も望んじゃいないぞ?」

 今回の恋戦を止めさせるように説得を試みる。

 「僕が望んでいるのだが? それともまさか怖気付いたわけではないよな、君?」

 真っ向から反論され説得の余地もないことが分かった。

 「だ、誰が怖気付くものか! そこまで言うならやってやるよ!」

 売り言葉に買い言葉で返事をしてしまう。

 「そうかそうか、君がそんなにやる気でいてくれて嬉しいよ。僕も遠慮なく叩きのめしてやるよ」

 言うだけ言って席へと帰っていった。

 ……これでもう後には引けなくなってしまった。

 「……なぁ、郷。お前恋戦に興味があるって言ってたよな?」

 後ろで傍観していた郷に話しかける。

 「そんなこと言った覚えがないな? そういえば身近にそんなこと言ってたヤツがいたな? 赤井……なんとかって言うやつだった気がするぞ」

 平然な顔をしながら嘘をついてくる。

 「お前嘘ついてんじゃねぇよ! 昨日興味あるって言ってただろ!? 俺がその貴重な体験を代わりにさせてやるって言ってんだよ!」

 郷を替え玉として恋戦に出させようと詰め寄る。

 「はて、なんのことだったかな? いやー、よかったな恋次。新学期早々こんな貴重な体験をさせてもらえるなんて。小金井に感謝しないといけないぞ」

 「ふんぎゅいいい!」

 くそ、コイツ……!!

 あくまでシラを切るつもりか!

 「いいじゃないか! 俺にはパートナーがいないけどお前にはーー」

 「それ以上言うな!」

 言葉の途中で遮られる。

 「それ以上言うとお前を消さなければいけなくなる……‼」

 一体彼を突き動かすものはなんだろう。 

 しかし、ここで消されては困るので静かに頷くことにした。

 「ふぅ……、よしそれでいい。俺も友人を消したくはないからな」

 結局替え玉の件は有耶無耶になったまま先生が来てしまった。

 そして時は進み放課後ーー。

 俺は学園の外れにある施設へとトボトボと歩きながら向かっていた。

 恋戦が行われる施設は体育館程の大きさの施設内にあるリング上で行われる。

 特にあの場所でやらなければならない決まりもないらしいが、どうせやるなら場所を整えてやろうという意図を持って作られたらしい。

 そこには当然観客席などもある。

 (……まぁ程よく戦ってから負けるとするか。パートナー複数持ち相手に善戦すれば誰にも文句は言われないだろう)

 そんなことを考えていると、もう施設へとたどり着いてしまった。

 扉から入り奥へ進むと、数人の教師と小金井'sが待ち構えていた。

 「よく逃げ出さずに来たな! それでは早速恋戦を始めようじゃないか!」

 気が早い小金井に急かされてリング上へと向かわされることになった。

 チラリと観客席を見ると、俺たちのクラスの人がチラホラいたり他のクラスの人も見に来ているのが見えた。

 そして、我が友達はというと……。

 「はーい、張った張った。小金井対恋次。勝つと思う方に賭けてくれ」

 「はいはい、小金井にベットね。おっ、恋次に賭けるのかい。大穴狙いは博打の醍醐味だよね」

 俺をダシに賭け事をしていた。

 しかも絶妙に先生たちからは見えない位置で。

 (アイツら……、この試合が終わったら覚えていろよ)

 あの二人への復讐を決意する。

 「赤井恋次! よそ見とは随分な余裕だな。さっさと武器を選びたまえ」

 目の前に運び込まれた武器をざっと見る。

 さすがに相手に致命傷を負わせそうな武器はないので、無難に7,80cm程の棒きれを選ぶ。

 『お互い準備はよろしいですね?』

 先生の問いにお互い臨戦態勢に入る。

 『それでは恋戦……開始ィ!!』












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