恋戦恋勝
りょーき
新学期①
俺がこの
校庭の桜は咲き乱れ、全てを祝福しているのではないかと錯覚さえも起こす。
そんな桜が咲く並木道を歩き学校へと向かう。
花を愛でる趣味などないが、こんなにも鮮やかに咲く桜を見ていると心が穏やかになってくる。
「おやおやぁ? そこにいるのは我が校の落ちこぼれである
前言撤回。
朝の爽やかな気持ちが一瞬でどこかへといってしまった。
『やめてあげなよ、
ケラケラと笑いながら取り巻きの女たちが形だけの制止をしている。
付き合いきれないと察した俺はそのまま無視をして 校舎の方へ進んでいく。
しかし回り込まれてしまった。
チィッ!
お前はドラクエの敵キャラか!
「おいおい、このボクが話しかけてあげているのにどこへ行こうというのかね?」
どうしてお前はそうも上から目線なんだ。
「教室に行こうとしてるんだよ。落ちこぼれだから勤勉にやっていかないといけないんだよ」
皮肉を込めて話しかける。
「ふん、殊勝な心がけだな。だがしかぁし! 落ちこぼれはどれだけ頑張ろうが落ちこぼれなんだよ!」
褒めたと思ったらすぐさま罵倒をしてくる。
お前は朝からテンションが高いな。
HAHAHAと取り巻きの女たちと笑いあってる小金井を尻目に新学期のクラス発表を見に行く。
(さて、と……。今年のクラスはどうなっているかな)
ボッチでないことを祈りながらクラス表を見る。
俺の名前は早い段階で見つけられたので、他のクラスメイトの名前も軽く一瞥する。
げっ、さっき絡んできた小金井もいるじゃないか。
絡まれないように大人しく過ごすようにしよう。
クラス表を見終えて教室へ向かうと見知った顔がいた。
「よぉ、恋次。今年も俺たちと同じクラスみたいだな」
「余程僕達とは腐れ縁なようだな」
ロッカー付近に立っていた二人の友人に声をかけられる。
「よっす、郷と聡。まさか今年も一緒のクラスになるとはね。今年もよろしく頼むよ」
なんとかボッチを回避できたことに内心では安堵している。
「おやぁ?
後から入ってきて相変わらず小馬鹿にしてくる小金井。
「へいへい、落ちこぼれでわるぅございました。ほら取り巻きの女が呼んでるよ。さっさと行ってやったらどうだい?」
シッシっと手で払う仕草をして向こうへ行かせる。
「君に言われなくても行くさ」
ふんっと鼻を鳴らして去っていく小金井。
「アイツはあの正確の悪さがなければ成績がよくて頼れるやつなんだがなぁ……」
郷がしみじみと言う。
「まぁ人間多少毒がある方が好かれるってことさ。水清ければ魚棲まずって言うでしょ?」
聡がフォローする気があるのかないのか微妙なことを言ってくる。
「気にすることは無いさ。それより俺の興味の矛先は2年生から始まる"アレ"のことで一杯さ」
この恋文学園には特殊な制度があり、その中に特別な勝負が存在する。
「はぁ、相変わらずガキっぽいというかなんというか……」
むっ。
「そういう郷は楽しみじゃないのかよ」
子供扱いされるのは心外だよ。
心も身体(意味深)も立派に大人になっているというのに……。
「いや、そういうわけではないが……」
郷が言い淀む。
ふんっ、人のことを子供扱いする割には郷も似た者同士じゃないか。
「お互い様というわけだね。しかし、"アレ"をあまり私利私欲のために使うのは推奨されていないんじゃないかな?」
聡は俺たちと違って楽しみではあるがそこまでといったような感じだ。
「なーに言ってんだ。あんな面白そうなこと今しか体験できないんだぞ。やらなきゃ損だ」
うんうん、その点は俺も郷に賛成だ。
「そうだよ、聡。高校のこの一瞬は瞬く間に過ぎていくんだよ。光陰鉄砲の如しだよ」
郷に賛同しながら聡にこの一瞬の大切さを説く。
しかし、当の本人である聡は呆れ顔をしている。
「ばっか、お前。それを言うなら光陰ボウガンの如しだろ?」
しまった、そっちだったか。
郷に訂正されたことを悔しがっていると聡がさらに呆れ顔をしていた。
「君たち、二人とも間違えているよ……。正しくは光陰矢の如し。どうして近代化させたり威力を上げたりするんだい……」
あー、それそれ。それを言おうとしてたんだ。
「まままままぁみんなを試そうとしたんだよ」
「そそそそそそうだぞ。よく答えられたな聡」
目がバタフライしているんじゃないかってぐらい泳ぐ。
「はぁ……。君たちは"アレ"に興味を示す前に勉強の方をどうにかしないとね。勉学だって立派な学生の本分だよ」
うぐっ、そう言われてしまうと何も言い返せない。
「聡の言う通りだね……。俺……勉強頑張るよ! 2年後ぐらいに!」
今すぐは無理だった。
「それじゃあ卒業してるんだよ……」
聡が力なく返答してきた。
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