ありがとうとつたえたくて

「笑舞も七海も忙しそうだな」

 窓から外を眺め、金曜日から投票が行われる生徒会選挙に向けた最後の演説を繰り広げている笑舞や七海を見下ろした俺は任期が残り三週間を切って暇を持て余し始めた美沙、柚鈴、明日香にそう告げた。

「笑舞ちゃんやナナちゃんもそうだけど、颯くんに恵吾くん、さやちゃんも最後の票集めに苦労しているみたいだよ」

「その五人が同じ役職で争わなくて済むのはある意味奇跡よね」

 俺と生徒会長の役職を巡って争った明日香が言うと言葉にズシリと重さが加わったように感じた。

「海君と会長の座を争ったアッスーが言うと言葉の重みが違うね!」

「ユズリンは美沙や海が言いにくいことを軽々言っちゃうよね」

「あっ! ごめんね! そんなつもりは無かったの!」

「そんな事を今更気にする必要無いわ。私は今こうして生徒会の庶務でいられることが幸せだと感じているもの」

 いつもの様に俺に突っかかって来るものだと思い警戒していたが、明日香はあまりにも穏やか過ぎる口調でそう告げた。

「そうだ、今の内に言っておくけど美沙も柚鈴も明日香も生徒会役員としてこの一年間俺のことを支えてくれてありがとうな」

「えぇ、過去最高に不甲斐ない生徒会長を支えるのは大変だったわ」

「美沙は今までやって来た生徒会とは違う雰囲気があって楽しかったけどなぁ」

「ワタシも! 助っ人と生徒会……あと勉強との両立は大変だったけど、海君やみんなが支えてくれたから今日までやって来れた! ありがとう!」

「楽しかったよ、ありがとう」

「まぁ、途中からではあったけれど海と一緒に生徒会を出来たことは間違いなく私の人生で一番の思い出よ。ありがとう」

 柚鈴に続いて美沙と明日香までもが照れ臭そうにしながらも感謝を告げてきたことで俺の目頭は自然と熱くなっていた。

「あ、あの……良い雰囲気になっているところ申し訳ないですが、皆さんの任期はまだ残っていますからね」

 今日を持って退任するかのような雰囲気を出してしまっていた俺たちを小雨先生が現実に引き戻した。



生徒会議事録

 来週には次期生徒会長が決まっているのか。 芹沢

 今回の当選者の発表は例年とは異なるという噂を耳にしたのだけど。 明日香

 そうなんだ! 柚鈴

 毎日一人ずつ発表していくみたいだね。 美紗

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