さいごのげんこう
「最後の原稿、確かに受け取りました」
「よろしくお願いします」
普段はすぐにそれぞれの仕事へ戻るワタシと龍鵞峯先輩ですが、何故だか今日はお互いにその場に留まり、その結果不自然な間が生まれてしまいました。
「何か聞きたいことがあるのでは?」
先に口を開いた龍鵞峯先輩はワタシの目をじっと見つめてそう問いかけてきました。
「はい、ずっと気になっていたことが。気になってはいたものの今日まで聞けずにいたことがあります」
「ウチが報道部の長として笑舞さんの前に現れるのは恐らく本日が最後です。ウチが答えられることでしたら何でもお答え致します」
「では、一つだけ」
ワタシは今日までずっと気になっていた、今もなお気になっている謎を初めて口にすることにしました。
「何故、龍鵞峯先輩は……報道部の方々はその原稿を直接取りに来られるのでしょうか? あまりにも非効率的ではないかとワタシは感じていたのですが」
「簡単なことです。報道に携わる人間として、他人との関わりは切っても切り離せないものだからです。実際に見て、聞いたものを発信するそれがウチたち報道部の役目です。顔を合わせずに得た情報だけを発信するというのはただの噂話に過ぎませんから」
明才高等学校で最も多くの生徒を抱える部活動の長である龍鵞峯先輩は大真面目にそう告げました。
「愚問でしたね」
「笑舞さんにもわからないことがあったとは驚きでした」
「ありますよ。ワタシの情報源は報道部ですから」
「今後とも、ご贔屓ください」
それが報道部部長龍鵞峯一先輩と交わした最後の会話でした。
生徒会議事録
龍鵞峯や伊吹たち三年組は今日で報道部卒業か。 芹沢
報道部には色々助けられたね。 美紗
困らせられたこともあったけれどね。 明日香
面白いものもいっぱい提供してくれたよ! 柚鈴
『さぁ、やってみよう!』の事ですかね? 七海
柚鈴先輩が一番ハマっていたものね。 笑舞
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