ようひし

 特に用事があった訳では無いのだが、何かに呼び寄せられるように購買に立ち寄ってみると、見覚えのある明才高等学校生徒の中でも特に見覚えのある少女が居た。

「おやおや、海パイセンじゃないですか」

「さやちゃんが俺を呼び寄せたんじゃないのか?」

「はて? 何のことかさやちゃんにはさっぱり」

 驚くほど堂々とさやちゃんはすっとぼけていた。

「でも、でも、丁度良かった。ナイスタイミングですよ! 海パイセン」

 どうやら今回は、俺が購買にやって来たという体で話を進めるらしい。そういう事なら俺もその体で話を聞くことにしよう。

「実はですね、をお伝えする仕事をから頼まれまして」

「いつもながら分かりにくいが、いつにも増して分かりにくいな」

「まぁまぁ、続きを聞いて下さい。とにかく、のために羊皮紙の様なものがないか探しているので一緒に探してください」

「いやいや、この学校は色々と常識外れではあるけれど、流石に羊皮紙なんて代物は……」

「あるよ」

 突然物陰から現れた男子生徒……八十八内山圭祐よないやまけいすけは現役高校生としては少しいや、かーなーり古いネタを使って食い気味に割り込んできたので、俺はさやちゃんの仕込みを疑った。

「これはさやちゃん的にもびっくり仰天、驚き桃の木山椒の木です」

 訂正。この場に居る全員扱うネタが古かった。

「僕はここでアルバイトをしているから知っているだけ。ただそれだけ」

「だそうです」

「そうか……」

 圭祐は羊皮紙をさやちゃんに渡すと特に何かを語る訳でもなく物陰に戻って行った。

「海パイセン……本当にさやちゃんの仕込みじゃないですよ」

 珍しく真面目な表情でそう告げるさやちゃんを見て八十八内山圭祐よないやまけいすけの登場は本当にイレギュラーだったのだと思い知らされた。



生徒会議事録

 もうすぐ会長という職に就いて一年だが、未だに名前も顔も知らない生徒っているもんだな。 芹沢

 当たり前でしょう。今年度の全校生徒数は六百人を超えているのだから。 明日香

 正確には六百四人ですが、改めてこの学校の生徒数の多さには驚かされますね。 笑舞

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