ふたりだけではないさんしゃこんだん
「失礼します」
そう告げたワタシと母様はきっちり四十五度に頭を下げて二年一組の教室を出ました。
「この次は確か……」
「颯……さんだったと記憶していますが、それがどうかなさいましたか?」
「折角なのでご挨拶をと思ったのです」
普段は他人様と関わりを持とうとしない母様がそう告げたことにワタシは驚きを隠すことが出来ませんでした。
「あなたの想い人なのでしょう? 母として一度きちんと彼と彼の親御様に挨拶をするのは礼儀だと思いませんか?」
「あらら? その顔立ちにそのお堅い喋り方……もしかして、和香ちゃん?」
「母さん、誰にでもフレンドリーに話しかけるなって言っているだろ!」
「笑舞ちゃん、やっほー! な~んか昔の友達に似ているなぁって思ったけど、やっぱりそうだったみたいだね」
「お久しぶりです。風さん」
とてもフレンドリーにワタシと母様に話しかけて来たその女性は、颯のお母様でした。
「風って、あの風?」
「和香ちゃんわたし以外に風って知り合い居るの?」
「颯さん、お久しぶりですね。確認させていただきますが、この方はあなたの」
「恥ずかしながら母です」
「颯ったら恥ずかしがることないのに」
「そんな態度が恥ずかしいんだよ」
颯は溜息を吐きながらそう呟きました。
「いやぁ、驚いたよ。まさか、息子の彼女がわたしの昔の彼女の娘なんて」
「本当に信じることが出来ませんね。娘に相応しいと感じた殿方が私の昔の想い人の息子だったなんて」
「母様、今なんと?」
「母さん、今耳を疑う言葉が聞こえたんだが?」
ワタシと颯が耳を疑ったその言葉はまごうこと無き事実のようでした。
颯 「今日は母さんのせいでごめんな」
笑舞 「風さんはいつも愉快で素敵な方です」
笑舞 「そのような所に母様は惹かれたのだと思いました」
颯 「母さんには言うなよ」
颯 「調子に乗るのが目に浮かぶ」
笑舞 「これは、ワタシと颯の秘密ですね」
颯 「あぁ、墓場まで持って行こう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます