ちょっときになって
「み、美沙先輩」
職員室の近くを歩いていた美沙に声を掛けてきたのは数日前から美沙が気になっていた男の子でした。
「恵吾くん」
「おはよう、ございます」
「おはよう。こんな所で会えるなんて思わなかったよ」
東西に長い本校舎の二階と三階の最西端に位置する職員室は校内の中で最も生徒の出入りが少ない場所でした。
「えっと、担任に呼び出されたので……」
「何か、あったの?」
不器用に微笑みながらそう告げた恵吾くんに美沙は恐る恐る尋ねました。
「し、心配されるような事では無いです。これについて話を聞いただけで」
そう言うと恵吾くんは美沙に一枚のプリントを見せてくれました。
「特別スクーリング制度……」
それは、明才高等学校が独自に行っている教育制度に関する説明が書かれたプリントでした。
「この制度を使っている人みたいに勉強の他に打ち込みたいことがある訳ではないですが、話を聞いているとちょっと気になって」
「これって確か、週に二、三回の登校で行う奉仕活動と提出物で成績を決める制度だったよね? 授業態度が成績に反映されない代わりに提出物と定期試験の結果が成績に大きく反映されてしまうけれど。恵吾くんが選ぶことの出来る選択肢としては良い選択肢だと思うな」
「登校しても教室に顔を出さなくても良いらしくて」
「現状は部活動に本気で打ち込んでいる生徒が主に使っている制度だけれど、本来は恵吾くんや美沙みたいに教室に行くのが好きではない生徒の為に作られた制度だからね」
「そうなんですね……あの、美沙先輩も?」
恵吾くんにそう言われて美沙はうっかり口を滑らせてしまったことに気が付き目を逸らしました。
「あはは、昔は……ううん、今も教室はあまり好きじゃないよ。でも、海や明日香に心配かけたくはないし、二人と一緒に過ごす時間は楽しいし、大好きだから」
「僕にもそんな友達が居れば……」
「断言はできないけどきっと大丈夫。この制度を利用して出来た時間を使えばきっと困った時に手を差し伸べてくれる……どんな時も一緒に笑い合える友達が見つかるよ」
「僕……美沙先輩の言葉を信じてみたいです」
「責任は、あまり取れないよ?」
そう答えると恵吾くんはとても綺麗に笑えていました。
生徒会議事録
海、明日香、ユズリンにナナちゃん、笑舞ちゃん。いつもありがとう。 美沙
どういたしまして! 柚鈴
美沙、どうした? 芹沢
こちらこそ、いつもありがとうございます 七海
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます