さんぼんのかさ

「嘘でしょ」

 明日香先輩は窓の外を見つめてそう呟きました。

「雨が降って来たみたいですね」

「本当だ。美沙が見てきた天気予報では一日中晴れ予報だったのに」

「ナナも今日は一日貼れていると思っていたので傘忘れてきちゃいました」

「ワタシも!」

 嫌な予感がしてカバンの中を覗いてみると、ワタシも一日中晴れだと断言した天気予報を信頼して折りたたみ傘を置いてきてしまっていました。

「置き傘置いていただろ? 談話室に置いていたよな?」

「ナナが取ってきますね」

 そう言ったナナは談話室にあるという傘を取りに向かいましたが……。

「会長、確か談話室に置いてある傘は」

「か、海先輩大変です! 傘が三本しかありませんでした」

「三本か……」

「二人一組で帰れば良いのではないの?」

 明日香先輩そう告げるとワタシたちは顔を見合わせました。

「このメンバーで二人一組だと……」

「美沙とワタシ、柚鈴さんと七海さん、駅に行く笑舞さんは海が送ってあげなさい」

「いえ、ワタシは……」

 今日も今日とて颯さんと帰ることになっているので遠慮しようとすると生徒会室のインターホンが鳴りました。

「ん? こんな時間に誰だ?」

「お疲れ様です。活動中にすみません。笑舞さん居ますか?」

「颯さん。まだ部活動中じゃ?」

「雨が強くなってきたから早めに終わった」

「そうだったの。それで、どうして生徒会室に?」

「実は、この雨で土砂崩れが起きたみたいで電車が止まっているらしくて……オレの親が迎えに来るらしいから良ければ乗っていかない? 親からは許可貰っているから」

「では、お言葉に甘えさせていただいても良いでしょうか?」

 そう告げたワタシを見て先輩方とナナは笑いを堪えるようなしぐさを見せていました。

「じゃあ、オレは生徒会が終わるまで学食で待っているから」

「颯、待ってくれ」

「会長?」

「笑舞、今日の仕事が終わっているなら先に帰っても良いぞ」

「ですが……」

「海の言う通りよ、颯さんだけでなく颯さんの親御さんも待たせてしまうことになるから」

 二人のその言葉に美沙先輩と柚鈴先輩そしてナナも同意していました。

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」

 ワタシは申し訳の無い気持ちで押し潰されてしまいそうになりながら机の上を片付けて颯さんと共に生徒会室を一足早く出ました。




笑舞 「わざわざ自宅まで送って頂きありがとうございました」

笑舞 「お母様にもよろしくお伝えください」

颯  「伝えたよ」

颯  「礼儀の良いお嬢さんだって」

笑舞 「当たり前のことです」

颯  「笑舞さんのそういう謙虚な所」

颯  「マジで好きだわ」

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