5月
すきなひと
「いらっしゃいませ。って、美沙ちゃん今日は一人?」
お散歩の途中で喫茶ロトルに立ち寄ると、同級生の愛知紅里ちゃんが可愛らしい笑顔で美沙を迎えてくれました。
「ゴールデンウィーク中は生徒会お休みだから」
「そうなんだ。今お水用意するからお好きな席にどうぞ」
窓側の席に座ると、紅里ちゃんがお水を二つ持って来て美沙の向かいの席に座りました。
「でもでも、生徒会ってお休みの日も誰かしらと一緒に居ない?」
「そうかな? ……そうかも」
「だよね! 千景先輩の時も仲良かったけど、今は特にそんな感じがする」
「美沙と海それに明日香は小学校の時からの幼馴染だからね。ユズリンは誰とでもすぐ仲良くなれるから美沙たちの輪にもすぐ馴染んだし」
「そっかぁ」
紅里ちゃんが相槌を打っている間にお客さんがやって来て、紅里ちゃんはそのお客さんにお水を出して注文を聞きに行きましたが、注文をお父さんに伝えるとすぐに美沙の所へ戻って来ました。
「美沙ちゃんごめん、注文聞いていなかったね。何にする?」
「それじゃあ、ナポリタンにしようかな」
「わかった。ちょっと待っていてね」
紅里ちゃんは美沙の注文を伝えて、先ほどのお客さんに料理を届けるとまたすぐに美沙の所へ戻って来ました。
「おまたせ、ナポリタンです」
「早いね」
「早いのはうちの自慢だから」
「そうだったね。それじゃあ、いただきます」
美沙が食べている間も紅里ちゃんはお客さんがお会計をする時くらいしか離れる事はありませんでした。
「紅里ちゃん、お父さんに怒られないの?」
「大丈夫! ちゃんと仕事はこなしているから。ところで、海くんは好きな人っているのかな?」
唐突な質問に美沙は食べていたナポリタンを噴き出してしまいそうになりました。
「あ、紅里ちゃんもしかして……」
「海くんのこと? ないない。格好良いとは思うけど好きにはならないよ」
「じゃあ、どうして?」
「だって生徒会は海くん以外女の子でしょ? それに校内でも海くんが色々な女の子と話しているのをよく見かけるし。最近だと、新入生の……」
「さやちゃん、烏居爽香ちゃん?」
「そう! さいちゃんの妹ちゃん。楽しそうに話しているのを見るけど」
そう言われると、海は生徒会の仕事以外で女の子と話すのはさやちゃんが多いような気がしました。
「海くんって意外と年下の子が好きなのかな?」
「どうだろう? 笑舞ちゃんやナナちゃんにも同じように接しているとは思うけど」
「そういう美沙ちゃんはどうなの? 明日香ちゃんみたいにそうだけど長く一緒に居ると好きになっちゃうの?」
明日香が海のことを好きなのは本人たち以外には当たり前の事実として知れ渡っているみたいでした。
「美沙は特には。海とは趣味も合うし仲も良いけど好きになるかって言われると違うかな」
「本当?」
「もし好きだったとしても、ライバルが多いから」
明日香は勿論、ナナちゃんとか……もしかしたらさやちゃんや千景先輩も。それにファンクラブだってあるくらいなので以外と海の事が好きな女の子は多いのかもしれません。
「そうなの? 誰だろう?」
「あんまり詮索はしないであげてね。海に知られないように好意を抱いている子だっているから」
美沙はそう言って最後の一口を口に運びました。
美沙 「美味しいものが食べたいな」
海 「いきなりだな」
美沙 「海には色々貸しがあるからね」
海 「何か貸してもらったっけ?」
美沙 「よろしくね!」
海 「近いうちな」
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