終ぶかつどうしんせつとどけ急

「おはようございます」

「待っていたわ」

 予定通り朝一番で生徒会室へやって来た紗綾を私は談話室へと招き入れました。

「会長は一緒じゃなくても良いの?」

「えぇ、今回は私に一任するようにお願いしたから。とりあえず座って」

 紗綾を一人掛けのソファに座るように誘導した私は紗綾が座ったのを確認してから紗綾の向かいにあるソファに腰を掛けました。

「さーちゃん、グランピングとても楽しかった。語彙力の無い言い方だけど、マジ最高だった。ここまでが親友としての私の言葉。ここからは生徒会庶務としての私の言葉」

「あ~ちゃんに楽しんでもらえたならこの一ヶ月めーっちゃ考えた甲斐があった。覚悟は出来ているから生徒会の答えを教えて」

 私も紗綾も深く深呼吸をしました。

「昨日受け取ったグランピング部の新設届を承認するか否か先ほど役員全員で話し合いました。グランピング部の新設届……承認します」

 その言葉に安堵した紗綾は声を出さず膝の上で拳を強く握って喜んでいました。

「ただ、活動を許可するには条件があります」

「聞かせて」

「グランピングを行う際は事前に火器使用許可申請書と行動日程表を生徒会に提出すること。グランピングは顧問参加で行うこと。男女混合での活動の際は男女が同部屋で宿泊しないこと。この条件が守ることが出来なければ即刻廃部とします。定期的に宿泊が伴う活動だから他の部活動に対して厳しい条件が加えられてしまうけれど、この条件で良ければ承認します」

 私自身でもあまりに厳しすぎる条件であることは理解していますが、相手が紗綾だからと言ってこの条件を変えるつもりはありませんでした。

「その条件、アウトドア同好会がアウトドア部だった時の条件だよね? グランピング部を作ろうと思った時からその条件が承認の条件になる事はわかっていたよ。だから、その条件で承認お願いします」

 深々と頭を下げる紗綾を見つめた私は覚悟を決めて空欄だった部活動新設届の庶務の欄に承認を示す印鑑を押しました。

「四月一日付でグランピング部の新設を承認します」

「ありがとうございま……えっ? 今日からじゃないの?」

「四月一日付の方が区切りは良いでしょ?」

 紗綾もといさーちゃんは最後の最後で駄々をこねてきましたが、何とか説得をしてグランピング部は四月一日付から活動することになりました。



生徒会議事録

 もう紗綾の新設届が来なくなると思うと寂しくなるな。 芹沢

 本当にそう思っているの? 美沙

 紗綾先輩にはもう一つありますけどね……。 笑舞

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