終ぶかつどうしんせつとどけ破

 キャンプでは味わうことの出来ない豪勢な食事や季節外れの花火、紗綾先輩がサプライズとして用意していた日曜大工同好会が作った本格的な檜風呂など、紗綾先輩の本気が嫌でも伝わって来る一日目はワタシたちが楽しんでいる間に終わってしまっていました。

「紗綾、何故最初に言っておいてくれなかった?」

 日付が変わって既に二時間が経ち、そろそろ就寝しようとこの場に居る八名の意見が一致してすぐ事件が起こりました。

「あはは~ 忘れていたよね」

 ワタシたちが泊まるログハウスの中には宿泊用の部屋が四つあり各部屋にベッドが二つずつ、合計八つ置かれていました。

 今回のグランピングの参加者は八人でベッドの数と一致していましたが、大きな問題が一点残されていることに今に至るまで誰一人として気が付いていませんでした。

「誰が海さんと同部屋になるか……困りましたね」

 八人全員が女性ならば何の問題もありませんでしたが、会長が男性であるが故に誰か一人が会長と同部屋になる必要がありました。

「ナナは構いませんけど」

「七海さん、自分を粗末にしてはダメよ」

「明日香は俺が何をすると思っている?」

「美沙は海が誰と同部屋になっても変なことはしないと思うけどなぁ」

「する訳ないだろうが」

「ワタシもミササの言う通りだと思うな!」

「どちらにせよ、誰かが同部屋になるのは確定事項なのでここは公平にクジで決めるのはどうでしょうか?」

 ワタシの意見は反対意見なく採用されて、部屋割りはこのようになりました。

101号室 美沙先輩、小雨先生

102号室 明日香先輩、ナナ

201号室 柚鈴先輩、紗綾先輩

202号室 会長、ワタシ

「会長、同部屋がワタシで申し訳ありません」

「いや、むしろ俺が謝るべきだろ?」

 そんな会話を交わしたワタシたちはお互いに背を向けて就寝しました。

 そして、何事もある訳がなく夜が明けました。



生徒会議事録

 明日の朝一番でグランピング部の新設届を持って来るらしいが、俺は承認で良いと思っている。皆の意見を聞きたい。 芹沢

 承認で良いと思うよ。 美沙

 ナナも承認したいと思います。 七海

 紗綾ちゃんと予算面の話をしたけど、問題無いから承認! 柚鈴

 断る理由も無いので承認で良いかと。 笑舞

 条件付きで承認するわ。 明日香

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