ふたりだけのゆびきり
「小柳橋さん!」
今回の学年末試験最後の科目の解答用紙が回収され、教室に久しぶりの平穏が訪れたと思った途端にワタシの平穏は彼の両手によって壊されてしまいました。
「ありがとう。本当にありがとう!」
「あの、ちょっと、颯さん!?」
ワタシの両手は文字通り颯のように現れた颯さんの両手に包まれて上下に揺さぶられていました。
「俺、今回は小柳橋さんほどではないけど良い点数取れた自信がある!」
「そ、それは良かった。ワタシも、颯さんに教えたことで良い点数を取れた気が……って、この話何度もしたような気がするわ」
このやり取り自体、この試験期間中に何度も行っていたのは間違いなく、最初は足を止め、目を丸くしてワタシたちのことを見つめていたクラスメイトも、今日は歩きながら、ほんの少し見つめただけで教室を出て行きました。
「颯さん、一つお願いをしても良いかしら?」
「あぁ、ここまで良くしてもらったんだから小柳橋さんの願いの一つや二つ叶えてあげるのが男ってもんだよな!」
そう言われてワタシは心の奥に秘めていた言葉を吐き出してしまいそうになりましたが、生徒会の一員であるということを思い出してその言葉はまだ心の奥底へ仕舞っておくことにしました。
「そんな大層な事では無いのですが、今回の学年順位がわかったら教えて頂けませんか?」
「俺の順位を? そんなことで良いのか?」
「はい。今はそれだけで十分です」
「よく分からないけど、分かった。約束するよ」
颯さんはそう言うと右手の小指を立ててワタシへ差し出してきました。ワタシも同じように右手の小指を立てて颯さんの右手へ寄せると、颯さんの小指はワタシの小指に絡みついて来ました。
「ゆびきり」
「嘘吐いたら針千本でお願いします」
ワタシは帰ってからずっと右手の小指を見つめていました。
美沙 「生徒会再開はいつにする?」
明日香 「試験は今日で終わったから明日からで良いと思うけれど」
柚鈴 「ワタシはいつでも大丈夫!」
七海 「ナナは先輩方に任せます」
笑舞 「ワタシもナナと同意見です」
美沙 「という事は、海次第だけど?」
海 「試験明けだから明日はゆっくり休んで」
海 「再開は月曜日からにしよう」
七海 「了解いたしました」
明日香 「了解」
笑舞 「かしこまりました」
柚鈴 「了解!」
美沙 「オッケー。小雨ちゃん先生にも連絡しておくね」
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