でんわ
昼休みの内に本日分の仕事を済ませておこうと生徒会室に向かったワタシは生徒会室の前に立っている会長が目に入りました。
「会長……」
何をしているのかと尋ねようとしたところでワタシは会長の耳元にあるスマートフォンの存在に気が付き出そうになった言葉を飲み込んでそっと生徒会室へ入りました。
昼休みとはいえ、普段から人気のない生徒会室周辺は黙っていればどんな物音も聞こえてしまい、それは誰かと通話をしているらしい会長の声も例外ではありませんでした。
「あぁ、俺は元気でやっているよ。家事もしている。気を抜けばすぐに明日香にやられるけど。……大丈夫、別に明日香とは喧嘩している訳じゃないし。最近は美沙も気にかけてくれるようになった」
聞き耳を立てるつもりはありませんでしたが、会長の声ははっきりと聞こえました。
「迷惑はかけてないよ……多分。はぁ? 変な気なんて起こす訳無いだろ。明日香も美沙も幼馴染だぞ。兄弟姉妹みたいなものだから」
会長が通話している相手は美沙先輩と明日香先輩のことも知っているようでした。って、聞かないようにしていたはずなのにワタシの思考は会長の通話に引き寄せられていました。
「それで、来月はいつごろ帰って来る? えっ……。か、悲しんでなんかない。一人の生活も慣れてきたからな」
相手がどう思ったのかはわかりませんが、ワタシは壁越しでも会長があからさまに悲しんでいるのが伝わってきました。
「そんなに謝るなよ。俺は大丈夫だから。仕事が忙しいなら仕方ないって。母さんがって事は父さんもだろ? 俺は俺で今の生活楽しんでいるから。心配しないでくれ。それじゃあ」
電話の相手は会長のお母さんだったみたいでした。
「はぁ」
会長は悲し気な溜息を吐くと生徒会室に入ってきました。ふと、その顔を見つめるといつも通りを装った作り笑顔が浮かんでいました。
生徒会議事録
議事録に記すことではないかもしれないですが、来週の学年末試験終了後に皆さんで集まりませんか? 笑舞
笑舞がそんな提案するのは珍しいね。 七海
やろうよ! 柚鈴
賛成! 美沙
そうだな。折角なら盛大にやろう。会場は俺の家で良いよな? 芹沢
異議は無いわ。 明日香
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