こやなぎばしふわ
最近……具体的には一昨日からナナの様子がおかしくなっていました。
あの日、ナナからメッセージを受け取った時刻を考えると、会長との買い出しの後にナナの心情に何かがあったのだろうとワタシはリビングから持ってきた蜜柑を口に運びながら予想しました。
「なるほど。ん……わからない」
独自のルートで報道部から情報を得たワタシはナナの様子がおかしくなってしまった理由を知りましたが、何故そうなるのかワタシには理解することが出来ませんでした。
「笑舞ちゃん、報道部の私的利用はいけないんだ~」
「姉さま……。その件に関しては姉さまにだけは言われたくないのですが」
「報道部を私的に利用してまで笑舞ちゃんが知りたかったことは何かな?」
姉さまはワタシに絡みつくように近づくと、ワタシの手からスマートフォンを取り上げて、報道部副部長の龍鵞峯先輩から直々に入手した情報を真面目な表情で黙読しました。
「笑舞ちゃんはこんな単純なこともわからないんだ」
姉さまはワタシの耳元でワタシの事を見下すようにそう囁きました。
「単純なことですか……」
「七海ちゃんは海ちゃんに恋している。これは七海ちゃんをよぉく観察していれば誰でもわかること。龍鵞峯ちゃんからの情報によれば、そんな七海ちゃんの前でその恋心に気が付いていない海ちゃんは明日香ちゃんの話をした。これだけで普通はわかるはずだけど、わからないんだ~」
「姉さま、焦らさずに教えて頂けないでしょうか?」
ワタシがそう告げると姉さまは面白くなさそうに大きな溜息を吐きました。
「笑舞ちゃんは本当にからかい甲斐が無いなぁ。要するに、恋する乙女は好きな人に他の女の話をされるのが嫌って事」
「そう、なのですか?」
恋と言うものをした事の無いワタシには理解の出来ない発想でしたが、考えられなくはない事であるという事は理解できました。
「当たり前のこと……と言っても私自身も経験は無いからあくまで現実的な憶測の話ではあるけれど」
姉さまは付け足すように早口でそう告げました。
「このような場合、ワタシはどうすれば良いのでしょうか?」
「どうすれば? 第三者である笑舞ちゃんはこの件に関してどうすることも出来ないでしょう? 結局は自分自身で考えて乗り越えるべき問題。もし笑舞ちゃんが出来るとすれば、七海ちゃんを否定しないこと。友達なのだったら、そうするんじゃない?」
姉さまにしては珍しく、自信は無いけれど言ってみたような口ぶりでした。
「姉さま、勉強になりました。ありがとうございます」
「お礼なんて要らない。私はただの気まぐれで可愛い、可愛い笑舞ちゃんにちょっかいを出しただけだから」
姉さまはそう言うと、まだ半分以上は残っていたワタシの食べかけの蜜柑を全て持ってワタシの部屋から出て行ってしまいました。
風和 「生徒会、そんなに楽しいの?」
笑舞 「姉さまは、楽しくなかったのですか?」
風和 「さあ、忘れた」
笑舞 「生徒会に所属していた頃の姉さまは、とても楽しそうに見えましたが」
風和 「だとしたら、笑舞ちゃんは私という人間をちゃんと見られていない」
風和 「かも」
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