おおそうじ

「どうする? 全然やる気が出ないぞ」

「本来は喝を入れるべきところだけど、美沙も同じ気持ち」

「もう! 二人とも気合が足りないよ!」

「柚鈴さん、申し訳ないけどもう少しだけ声のボリューム下げられる? 頭が痛い」

「先輩方、これが今年最後のお仕事なので頑張りましょう。えいえいおー」

「ナナ、全然手が上がっていないけれど」

 昨日の忘年会兼クリスマス会兼明日香先輩の庶務就任祝いで完全にはしゃぎ過ぎたワタシたち生徒会役員が目覚めたのは今日の集合時間である午前九時でした。

 会長の自宅のリビングで倒れるように寝ていたワタシたちは目覚めと同時に今日が今年の生徒会活動最後の仕事である生徒会室の大掃除の日だったことを思い出し急いで帰宅して生徒会室に集合しました。

「笑舞さんは美沙のジャージ?」

「はい、家まで着替えに戻るのは大変だからと美沙先輩が貸してくれました」

 ワタシと美沙先輩は体形が近いのでお借りしたジャージはワタシにフィットしていました。

「常日頃から掃除をしていたのが不幸中の幸いだな」

「そうは言っても、普段は手の届かない所がメインだから大変なのは変わりないよ」

「分担分けは、ワタシと海君が高いところと力仕事を中心に、それ以外はそれ以外で!」

 柚鈴先輩の分担分けは随分と抽象的な気がしましたが、庶務として加わった(正式には来年一月一日付で就任)明日香先輩を含めた全員が何となく理解して大掃除を開始しました。

「これでよしっ」

「海にユズリン、力仕事お疲れ様」

「美沙たちもお疲れ様。これで来年も生徒会を頑張れそうだな」

 会長と柚鈴先輩が机を元の位置(正確には今までとは配置が換わっている)に戻して生徒会室の大掃除は予定よりも三時間ほど遅れて終了しました。

「明日香先輩、改めてこれからよろしくお願いします」

「うん。よろしく」

「なぁ、折角だし集合写真撮らないか?」

「ジャージのままで?」

「美沙は悪くないと思うよ」

「美沙がそう言うなら。海、早く準備して」

 明日香先輩がまんざらでもなさそうな表情でそう言うと、会長は自分のスマートフォンのカメラアプリを起動しました。

「タイマー起動するから並べ」

 その指示を受けてワタシたちは会長のスマートフォンに向かって右からワタシ、ナナ、美沙先輩が前列に、明日香先輩、会長(のスペース)、柚鈴先輩が後列に並びました。

「はい、チーズ!」

 会長の号令でワタシたちはピースサインを向けましたが、すぐには撮影されず、五秒ほどが経ってワタシたちが気を抜いた瞬間にシャッターが切られました。



生徒会議事録

 これで今年の仕事は終わったな。 芹沢

 皆、お疲れ様。もう何度も言っているけどこれからよろしく。 明日香

 今月はアレ無かったね! 柚鈴

 アレはもう良いかな。 美沙

 今年はもう生徒会室に集まる事は無いのでアレは無いと思いたいです。 笑舞

 なんか、嫌な予感。 七海

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