てづくりくっきー

 昼休みに入ってすぐ、ナナは生徒会室へ向かいました。

 コン、コン、コンと普段は叩くことのない扉を叩いたナナは軽く呼吸を整えてから扉を開きました。

「あれ? 七海か」

「にへぇ~ すみません。ちょっと緊張しちゃって」

「緊張? いつも来ている生徒会室なのに?」

「そ、そうですよね」

 ナナは笑って誤魔化しました。誤魔化しきれているかどうかは別として。

「ん? 何か甘い香りがするな」

「気付きました? 実は、調理実習でクッキーを作って来たので差し入れに来ました」

「そうか、七海と笑舞のクラスは調理実習って言っていたな。どうせ差し入れをするのなら放課後でも良かったんじゃないか?」

 少しは乙女心も考えて欲しいと思いましたが、そんな鈍感な所が海先輩の悪いところで、良いところだとナナは知っていました。

「作りたてなので、折角なら温かいうちに食べて欲しいと思って。あと……少し失敗しちゃってあまり数が作れなかったので美沙先輩と柚鈴先輩の分まで作れなくて」

「そうだったのか。そんな貴重なものを俺だけで独占してしまうのは二人に悪いが作りたてならまだ温かいうちに食べないと七海にもクッキーにも悪いよな」

 そう言った海先輩は給湯室へ向かい、アイスレモンティーを二つ準備して戻って来ました。

「一人きりも寂しいから七海も付き合ってもらえないか?」

「お、お付き合いですか! はい。ぜ、是非お願いします」

 ナナの思い浮かべているとは違うことは理解しているつもりですが、ナナは心の底から嬉しくなってしまいました。

「七海、このクッキー凄く美味しいよ」

「ありがとうございます。海先輩にそう言ってもらえて嬉しいです」

 海先輩は言葉通り本当に美味しそうな表情でナナの作ったクッキーを一枚一枚ゆっくりと味わってくれました。



生徒会議事録

 笑舞ちゃんの作ったクッキー美味しかったよ。 美沙

 ワタシ、塩クッキーって初めて食べた! 柚鈴

 私は普通のクッキーを作ると聞いていましたが、塩クッキーも悪くないですね。 小雨

 クラスメイトがうっかり砂糖と塩を間違えてしまったので急遽、塩クッキーに変更したのですが、美味しいと感じて頂けたのなら良かったです。 笑舞

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